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▼ すあまにあ倶楽部 第52回 アップルビデオ閉店によせて

文=抱枕すあま

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↑八王子にあった『アップルビデオ』。残念ながら閉店した。(この記事は2009年1月にWEBスナイパーで掲載されたものを再録したものです)


お正月に、家族でコタツに入ってテレビを見ていたときのこと。日本テレビ系の『秘密のケンミンSHOW』の中で、「大阪府民は、和菓子の『すあま』を知らない!?」という話題がありました。

どうやら、大阪府民は“すあま”のことを知らないようなのです。なんでも、江戸で誕生した“すあま”は、上方意識が強く、京菓子が一番だと思っていた当時の大阪の人々には受け入れられなかったのだとか。でも、東京では非常にポピュラーな和菓子で、とても人気があるということで、話がまとめられていました。

テレビを見ていた私は、「そうか。私は大阪では人気がないけど、東京では人気があるんだ……」などとよく分からないことを考えていました。すると、うちのオカンから、「すあまって知ってる?」と聞かれました。「ま、まあね。東京での暮らしが長いから……」と返答しましたが、まさか、自分の息子の名前が“すあま”になっているとは、想像もしていないだろうなぁ……。


JR八王子駅から北西方向に200mほど進んだ場所に、『アップルビデオ』はあった。昔はどこにでもあった、レンタル落ちのビデオを販売していた小さなお店である。もちろん、レンタル落ちのビデオだけではなく、時代の移り変わりに合わせ、新作のDVDなども扱うようになっていた。

しかし、地域に密着した商店街が大資本のショッピングセンターの進出により衰退していったように、DVD量販店も大型のチェーン店が進出し、小さなお店は次々と淘汰されていった。都心から離れたこの八王子の地も例外ではなかった。

2008年12月23日。八王子の『アップルビデオ』は、多くの人々に惜しまれつつ閉店した。

『アップルビデオ』の社長と知り合ったのは、『S&Mスナイパー』本誌に『SMビデオ探偵団』を連載していた西村知彦氏が管理人を務める人気サイト『SM探偵団』のオフ会の時であった。その時にお会いした社長の穏和な性格に惹かれ、何度かお店に伺ったり、通販を利用させてもらったりしていた(『SM探偵団』の団員は通販の送料が無料であった)。

まだ、DVDではなくビデオが主力商品であった頃、アートビデオやシネマジックの作品は非常に高価であったため、レンタルするしかなかった。そんな中、『アップルビデオ』は系列のレンタル店から、レンタル落ちのビデオを大量に入手することができた。そのため、『アップルビデオ』はレンタル落ちのビデオの品揃えがよく、しかも安く購入できたのだ。

しかし、AV業界はいつの間にか大手メーカーのレンタル商品から、インディーズメーカーによるセル商品へと移り変わっていった。レンタル落ちのビデオよりも安く、かつ今まで見たことのなかったような魅力的な商品が大量に市場に出回ったのである。この頃から、レンタル落ちではなく、新作の商品を専門に販売する店舗が増え始めた。

変化はそれだけではない。新作の商品が次々と大量に発売されるため、お店はどんどん大規模になったいった。お店を大きくしなければ、客の要望に応えられるような品揃えにならなかったのである。そのため、資本力のある会社は次々に大型店を増やし、今までレンタル落ちのビデオを中心に販売していた小さな店舗は、次々に消えてしまった。

近くに大型店が進出してきたとき、『アップルビデオ』の社長は『SunShop』の総帥にも相談していたようである。そして、『SunShop御徒町店』をマネて、「3が付く日は20%オフ」というサービスを実施していた。一時は客足が戻ったようだったが、近くに2つ目の大型店が開業したため、『アップルビデオ』の閉店を決めたらしい。

『アップルビデオ』の閉店の日。私は、東京駅から中央線の快速列車に乗り込み、八王子の『アップルビデオ』へと向かった。東京駅からは、快速でも八王子まで1時間近くかかる。もう、これからは八王子へ行くこともなくなるのかと思うと、だんだんと寂しさがこみ上げてきた。

お店に入ると、いつものようにアートビデオやシネマジックのレンタル落ちビデオが大量に並んでいた。いつもと違ったのは、それらが閉店セール価格で売られていたことだけだった。

もはや、レンタル落ちの商品を見かけることも少なくなった。どうやら、私が愛してきたレンタル落ちのビデオをメインに販売しているような小さなお屋は、すでにその使命を終えてしまったようだ。『アップルビデオ』に並んでいたレンタル落ちのビデオだって、昔はお宝の山だったのに、現在では復刻版のDVDが安く出回っている。もはや、新作のDVDを一通り揃えた大型店でなくては、生き残れないのである。

ただ、その大型店も安泰とはいえない。エロの世界は、不景気と関係がないといわれている。ただ、知り合いのお店は、どこも厳しいようだ。理由は明白である。ネットでのDVDレンタルが広まったからである。

レンタルであれば、ネットでも実店舗でも同じではないかという人がいるかもしれないが、ここには大きな違いがある。今までは、インディーズ作品というのは、基本的にレンタルができなかった。欲しい作品があったら、買うしかなかったのだ。

しかし、ネットレンタルでは、インディーズ作品までもがレンタル可能なのである。独自の作品を作り続けているあの『中嶋興業』までもがレンタル可能だと知ったとき、私は本当に驚いたものだ。こうなると、私の場合はDVDを購入する必要性がなくなってしまったのだ。

年間20万円近くDVDを購入していた私でも、ネットレンタルを利用するようになった昨年は、2万円程度しか購入していない。だからといって、ネットレンタルに残りの18万円を使った訳ではない。このお金は、本来であればセル店に入る予定であったお金なのである。

街の小さなお店を駆逐し、インディーズ作品を販売することで急成長を遂げてきた大型店は、これからどうなってしまうのだろうか? 今までは、家族にバレることを避けるため、こっそりとお店で購入していたお父さんたちも、今後、ダウンロード販売が主流になってくれば、わざわざお店で購入する必要がなくなる。パッケージがないから、家族にDVDを見つけられることもない。

そのため、これからはレンタルを行なわないような小さなインディーズメーカーの作品しかお店では売れなくなるだろう。『SunShop\x87U』の年間売り上げランキングTOP10を見ているとよく分かる。SCRUM、電人、DragonImageなど、レンタルができない小さなメーカーの作品が上位にランクインしているのだ。

こうなると、大型店が生き残る道はただひとつしかない。そう、昔の街中にあったお店のように、小さなお店にすることだ。現在、売り場面積のほとんどを占有している大手メーカーの作品は、そのほとんどがレンタル可能である。このようなメーカーの作品は、もともと売値が安いので、薄利多売でしか利益が得られない。しかし、レンタル可能な商品は、これからさらに売れなくなっていくであろう。

これからのセル店に求められるのは、今よりもさらにマニアックな商品を揃えることである。そうなると、かつてのマニアック商品のように、1万円くらいの価格帯が中心となる可能性がある。また、これまで流通に乗っていないようなメーカーを探し出すことになるため、各店舗によって品揃えが大きく異なっていくであろう。

私は、もう一度ビデオ店巡りの楽しさを味わってみたい。確かに、ネットでサンプル動画を見て商品を選ぶのも楽しい。しかし、お店で商品を選ぶときのワクワク感やパッケージ写真に胸を躍らせて家に帰るまでの時間は、何物にも代え難い喜びがあったのだ。家に帰り、「パケ写にだまされた!!」と嘆いたのも、今では懐かしい想い出である。

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↑実家にあった『七福神人形焼き』。その名の通り、七福神の顔を形取った人形焼きです。ただ、謎なのは、10個入りなんです……。7人の神様の他に、いったい誰が紛れ込んでいるんだ!?


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