私の嗜肛錯誤の日々【5】
三、ケツ穴令嬢・深雪
悪友、研一郎の言葉が正しい、と証明されて以来、私の行脚が始まった。美代子とは半年ほどで手を切ることができた。美代子はやはり心中未遂事件を起こした女の特異性を惹起し始め、私に異常な思慕を寄せるようになり、恐くなった私は、少々惜しかったが、早々と手を切ったのだ。
それから二、三年は、私の嗜肛癖を満足させてくれる女は、現われなかった。もちろん、その間に情を交した女たちの中にもアヌスに快感を持つ女も多くいたが、羞恥心が先に立つらしく、美代子ほど見も心も没し去るほどに感応する女はいなかった。ところがある夏、例の研一郎の知人が持っていた軽井沢の別荘に行ったときのこと、美代子以上にアヌス感覚を秘めた女に出会ったのである。
深雪という名のその女は、財閥とまではいかないが、かなり名の知れた建築会社の社長令嬢だった。
淑淑やかで色が白く、華奢な躯つきの女で、十九歳だった。「あ「あの女と所帯が持てるんなら、ら、俺は死んでもいいねェ」とか、「深雪さんを見ているとお○○こがないんじゃないかと思うほど淑やかでさァ、初夜のことが今から心配だわさ」などと取り巻きの男たちは、どうせ叶わぬ夢とばかり、ヤケクソ気味に噂していたものだ。
だが私には放蕩児特有のカンが働いていた(自慢にもならないが……)。
――この美雪っていう女、淑やかそうに見えるけど、ほんとうは相当な淫婦に違えねェ。
そのとき私はまだ気がついていなかったが、これが私にとって、真性マゾヒストとの出会いになったのである。
私は深雪の前で、取り澄ました振る舞いをするなどという愚行を犯さなかった。深雪はひょうきんな私の虜になった。深雪の周辺には私のような飾らない男がいなかったのだ。
私は同行していた研一郎に言った。
「あの深雪っていう女、モノにしてみせるぜ」
「えっ、あっははは。いくらおめえでもそりゃムリだぜ」
笑って相手にしない研一郎を何とか説き伏せて、十人近く滞在していた別荘の泊り客を全て追っ払ってもらった。みんなをどう騙したのか知らないが、詐欺師をもたぶらかす研一郎の口説にかかってはひとたまりもなく連れ出されたのだろう。
(つづく)
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