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▼ 花嫁奴隷〜渚〜【9】

花嫁奴隷〜渚〜【9】


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「生贄おさな妻〜収集家の奴隷〜」(大洋図書)より
脚本=雪村春童
著者=芽撫純一郎

花嫁奴隷〜渚〜【9】

白いTシャツにジーンズ。
ジーンズの裾は雨で濡れそぼち、Tシャツは大量の汗で肌にぴったり貼りついていた。
暑さのせいもあるが、半分は緊張からくる脂汗だと本人だけは知っていた。

突然、その背に竜二の低い声が飛び、薄い筋肉が硬くこわばる。

「竜也、それで10人目は?」

這うような声が竜也の全身に絡みつく。

「兄さん……俺はもう……」

やっと絞り出した声がかすれ、戦慄いていた。


竜也は、竜二が出す特定の声色をいつも恐れていた。
心の襞の奥深くまで分け入り、竜也が抱えるあらゆる秘密を「俺は知っているぞ」と脅迫してくるような独特の声。

その声が鋭く背中を打つ。

「10人目! 俺の嫁!」

振り向こうとした竜也の顔にソファのクッションが激突し、弾んでココアのカップをなぎ倒した。

「兄さん……お願いだよ、こないだの子だって申し分のない素敵な女性だったじゃないか! 『調教』なんかやめてくれ……もっと優しくしてあげればあの子だって……」

震える声で訴える竜也に、2個目、3個目のクッションが立て続け飛び、「やかましいわい!」と怒声がかぶさる。


(つづく)


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