花嫁奴隷〜渚〜【10】
「俺の顔を見ろ! 蝦蟇だぞ? どこの女が蝦蟇に優しくされて心を許すんだ? 俺には俺のやり方がある。ずっとそうして生きてきたし、お前はいつも協力してくれてたじゃないか。今回だってあと少しで上手く調教できたんだ! あと少しで……」
喉を震わせるように言いながら、這うように歩み寄ってきて、竜也の肩を正面から掴む。
「きっと今回で最後だよ。これまでの経験も活かすし、上手くいったら二度とこんなことしなくて済むんだ。お前だって、可愛い子が俺の嫁になって、ずっと家にいてくれたら嬉しいだろ? いつもお前に選ばせてやってるじゃないか! な? 次もお前の見立てでいいからさ。攫ってきてくれよぉ!」
そう言って竜也の目を覗き込む。
竜二は無意識にしているのかも知れない、あるいはわざとかも知れない。
しかし、いずれにしても竜也は竜二のこの声にどうしても逆らうことができないのだった。
物心ついた頃から、そして三十代も半ばを過ぎた今でも……。
「分かってるよ兄さん。本当は、もう地下室に眠らせてあるんだ。知ってる子だよ。だけど兄さん、約束してくれ。今回が最後で、そして絶対に壊さないって!」
すがるような言い方に媚びが滲む。
「あいかわらず馬鹿だな竜也。ちゃんとやってるなら最初からそう言えば怒らないのに」
竜二の唇がVの字に吊り上がり、暗い瞳の奥に粘着質な灯りが鈍くともった。
瓶のラベルに名を書かれた女性たちに対し、彼らが具体的に何をしてきたかが分かるのはこれからである。
(つづく)
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