花嫁奴隷〜渚〜【17】
いきなり現われた男が慌てふためいた様子で一旦姿を消し、小さな瓶を持って再び現われた時、渚は入口と反対側の壁に背をぴったりとつけて身を固くしていた。
男が、犯人もしくはその一味であることは間違いなさそうだったが、小瓶の意味は分からなかった。
歳は自分の父親に近いほどいっているようだが、物腰や声の出し方は子供のようだと思った。
警戒心というものがまるで感じられない。
牢の鍵を開けて中に入ってきた男は、料理の載ったトレイをベッドに置くと、渚に丸い背を向けてしゃがみ込んだまま、床にたまった小便を手でかき集めて瓶に垂らし込んでいるのだった。
「あぁー、もったいない、もったいない」
残念がっているように聞こえる。
しかしその口調はどこか楽しげでもある。
「渚ちゃん、次からトイレ行きたい時は、大きな声出して呼んでね」
男が、床を舐めるように、身をかがめたまま言った。
その背中はやはり無防備である。
渚は無言のまま、ベッドの上のトレイから箸だけを取って握った。
(つづく)
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