花嫁奴隷〜渚〜【22】
「心配しなくてもいい。私は渚ちゃんのこと、竜也に聞いてよく知ってます。理解しています。竜也っていうのは私の弟で、君をここへ連れてきた男なんだけれども、いろいろ教えてもらいました。1988年3月4日生まれ、うお座、初潮の始まりは小学校5年の8月。中学1年の時、用務員のおじさんにいたずらをされて男性不信になる。そうでしょ? 高校3年の春、初めて彼氏ができる、その男と来月、結婚する。まあ私と結婚するからそれは無理だけども」
「何を……正気なの?」
「はい、私は20年以上この屋敷から出たことがありませんから、最初からこんなに理解できているのは初めてです」
渚の瞳に、今度こそ恐怖と絶望の色が宿った。
――殺される。
本能的に身体が動きだす。
床を蹴り、クラウチングスタートの要領で跳ぶように走った。
そのまま一気に竜二の脇をすり抜け、出口まであと数歩のところまで迫った。
その時――
牢の扉がスルスルとスライドし、渚の目の前で音を立てて閉じた。
同時に鍵のかかる金属音が冷たく響く。
「リモコン式なんだ」
竜二が、手に持っていた基盤をポケットに戻し、「あと、舌噛んで死のうとしても、喋れなくなるだけですぐ蘇生できるから」と笑った。
(つづく)
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