花嫁奴隷〜渚〜【23】
自室に閉じこもったままの竜也が小さなモニターの画面をじっと見つめていた。
地下牢に監視カメラが取りつけてあることを竜二は知らない。
渚を攫う決心をした時、竜也が密かに取り付けたカメラなのである。
なぜ、そんなことをしたのか……。
竜也は自分でもよく分からなかった。
いや、深層心理では分かりすぎるほど分かっているのに、その恐ろしい考えを直視することができなかっただけなのかも知れない。
渚が、泣きながら竜二の差し出した朝食を食べている。
食べなければ何をされるか分からない――その恐怖から無理に口を開け、咀嚼しているのに違いない。
過去にも見たことがある光景だった。
その時は別の女で、モニター越しではなく、目の前で見ていた。
あれは何という名前の女だっただろうか。
頭の一文字すら思い出せなかった。
きっと何も考えずに、ただ呆然と見ていたのだ。
自分が兄の花嫁候補として攫ってきた女が、泣きながら飯を食い、意味も分からぬまま「調教」という名の儀式に参加させられる姿を。
(つづく)
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