花嫁奴隷〜渚〜【25】
恐らく竜二は、自分がなぜ他人から激しい抵抗に遭い、拒否されるのかを理解していなかった。
幼少時からそうであり、どうしても理由をつけなければならない時は、自分の醜い顔が原因だと主張した。
本音を言えば、人間の気持ちというものが見えずに戸惑っているのではないかと竜也は観察していたが、学校を出て屋敷に閉じこもるようになってからは、その戸惑いさえ失われているように感じられた。
だからあいつはどんな残酷なこともできるのだ――。
竜也はこれまでに見たいくつかの場面を記憶から掘り起こして思い浮かべた。
パイプ洗浄用の洗剤で髪の毛を溶かされた女がいた。
催涙ガスを浴びて涙と鼻水を延々に採取された女がいた。
通常の汗と脂汗の二種類の汗の味比べをするという儀式のために、目隠しをされたまま固縛され、幾度となくスタンガンを当てられた女がいた。
もし、竜二を止めることができる者がいるとすれば、自分しかいない。
そう思う。
いや、思わないではないのだが――必死になったところで痴漢的にこそこそと立ち回ることしかできない現実の前で、竜也はただモニター越しに兄の所業を見つめ、渚を見つめて、自分の中の衝動と無意識に語りあっているのだった。
時刻は午前11時。
一睡もしていない竜也の目に、食事を終えた渚が竜二の手にするスタンガンに怯えつつ、一枚一枚服を脱いでいく光景が映っていた。
(つづく)
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