花嫁奴隷〜渚〜【31】
「あ……渚ちゃん……」
竜也がバネ仕掛けの人形のような動作でベッドから飛び降り、後ずさった。
「お、起きてたのかい?」
声がかすれ、喉に痰がからまった。
まだ濡れたままのペニスが見る見るしぼんでいく。
自分をまっすぐに見つめてくる渚の瞳が恐ろしかった。
「あなたが……私を攫ったのね?」
渚が言う。
ゆっくりとした、落ち着いた声が竜也の自我を揺さぶる。
頭が真っ白になっていた。
適切な言葉が何一つ出てこない。
いや、この場において適切な言葉などというものは、そもそもないのだろう。
ただただ逃げ出したいという衝動だけが確かで、しかし渚のなげかける言葉の網に足を絡め捕られ、目を伏せることしかできなかった。
そうなんでしょう?――と渚が続ける。
「お願い、教えて。私をどうするつもりなの? 殺されるってどういうこと? あなたが今、私にしたことをあいつに言うと、私もあなたも殺されるの?」
「お、俺は……俺は……」
いつもそうだ――と竜也は自分の足元を見つめてかろうじて思う。
正しいのはいつも自分以外の誰がで、まっすぐにものを言われるとそれだけで身動きがとれなくなってしまう。
竜二に逆らうことができないのもそのためだ。
なぜ……なぜ、自分以外の人々には迷いというものがないのだろう。
なぜ自分だけが木偶人形に……。
(つづく)
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