花嫁奴隷〜渚〜【43】
これは……何だ……。
牢内の景色が歪んで見えた。
睡眠不足のせいか、それとも熱があるのだろうか――と最初は思った。
痴漢行為にしか反応しないはずのペニスが、渚の裸体を間近に見ただけで痛いほどに屹立していた。
確かに渚は全裸のまま手錠でベッドに拘束され、下腹部をなまめかしく戒められている。
しかし、モニターでも見続けていたその姿は、痴漢的なエロティシズムを刺激するものではないはずだった。
――それなのに。
渚が全身から発している妖気のような色気のせいなのかも知れなかった。
空気までが粘着性を帯びているように感じられる。
何もかもが異様だった。
渚は竜也をみとめると、瞳をトロンと潤ませて、「早く……」と言った。
見せつけるように脚を大きく開いて腰を浮かせている。
全身にネットリと脂汗をかいていた。
唇の端に泡が付着し、荒い息のために腹が大きく波打っている。
「早く犯ってよ! 犯りたくて攫ったんでしょ……早く!」
別人のような、ヒステリックな声を上げて竜也を睨みつけた。
頬がブルブルと痙攣している。
ねぇ、お願いよ――と声を震わせ、今度は哀願するような瞳で竜也の目をじっと見つめる。
(つづく)
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