花嫁奴隷〜渚〜【47】
破裂音を聞いた竜也が地上階へ続くドアを開けた時、竜二はすでにドアの向こうに立っていた。
そして目が合った瞬間、竜也に向けて笑気ガスのスプレーを噴きつけたのであった。
たちまち竜也の膝が折れ、ドアの前で昏倒する。
竜二は右手にスプレー缶、左手に金属バットを握ったまま、倒れた竜也の腹をサッカーボールのように蹴り上げ、竜也の身体を牢内に押し戻した。
「あ……」
ベッドに手錠で固定されたままの渚が呆然として口を開ける。
竜二は無言のまま、そんな渚につかつかと歩み寄ると、無造作に笑気ガスを噴きつけた。
竜也が目を覚ました時、まず彼の目に入ったのは、床だった。
床を、何か赤いものが埋めている。
血ではなかった。
それは一度溶けて固まった蝋であり、その蝋が、顔を横向きにしてうつ伏せた自分の眼前に広がっているのだった。
首をひねりながら腕を動かそうとすると、全身に違和感を覚えた。
最初に、顔と床が蝋で接着されていることが分かった。
両腕は後手に縛られ、脚も芋虫のように括り合わされているようである。
さらに、手足を縛った縄尻が、床に設置された鉄の輪にしっかりと固定されていた。
転がることもできないようになっている。
しかしそればかりではない。
手も、足も、背中も、頭も、すべてが分厚い蝋で覆われ、布団の下敷きになったように、全身が蝋に押し潰されているのだった。
竜也はその全景を壁に立てかけられた鏡で知った。
(つづく)
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