花嫁奴隷〜渚〜【48】
鏡にはさらに、凄まじいものが映っていた。
竜也の真上の天井付近に、火の灯された無数の蝋燭が、斜めにかしいだ状態でぶら下がっていた。
一体何本あるのか、蝋燭は1メートルほどの分厚い層をなして、時にパチパチと禍々しい音を立てていた。
「熱っ」
当然、溶けた蝋は、竜也の顔と言わず身体と言わず、常に雨のように振り注いでいる。
それまでは床に面していた頬が、瞬く間に赤い斑点で覆われていく。
事態の余りの異常さに慄然とし、喉の奥から嗚咽ともうなりともとれない低い音が漏れた。
「起きたか、竜也……いや、家族を裏切った畜生よ」
足のほうで竜二の声がした。
「蝋燭は、まだ何万本とストックしてある。前から試してみたかったからな」
声が硬い。
「熱いよ……やめてくれ……兄さん」
「ハッ、熱い? 笑わせるなよ。俺が蝋責めなんかで納得すると思うか? お前はこれから、圧倒的な量の蝋で生き埋めになるんだよ。身体だけじゃない。そのうち顔も埋まる。あとどれくらい持つかなァ。たいしてかからんと思うが、元兄弟のよしみだ……お前が愛した女の最期も見ておくか?」
足音がして、竜也の視界に竜二の足が入ってきた。
鏡の前で一旦止まり、手が下りてきて鏡面の角度が変えられる。
ほれ見ろ――と足が再び遠のくと、鏡に渚の姿が映っていた。
(つづく)
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