告白=栗栖宏二仮名)
母はメス犬に堕ちて……
「それじゃ、せいぜい愉しむんだな、おれは隣の部屋で待っているぜ」
男は、ぼくの股間と母の乳房を一度ぐいとわし掴みにし、そのまま隣室へひきさがってしまった。
男の指が離れたあとも、ぼくの下腹にはその感触が残り、その上、塗り込められたばかりの薬液が、後ろの門深くに熱気をはらみ、むず痒さが、やがて情欲の引き金となり、ぼくは脳髄までしびれそうな愉悦の囚となっていった。
「いや、だめ!」
ぼくが、四つん這いのまま母の乳房に唇を近づけていった時、母は割り拡げられた四肢をちぎれる程によじりながら、悲痛な声をあげた。
ぼくは一瞬身をとめたが、やがて裸身のまま悶える母の上に、ゆっくりと体を重ねあわせていった。
隣室には、いつのまにか父がいた。無論、肉獣と化しているその時のぼくも母も、それには全く気付かなかった。
父は男にいくばくかの金を渡し、男はそのまま立ち去ってしまった。細めに開いたドアごしに、ぼくたちを見守っていた父は、やがてスケッチブックを開き、狂気の如く筆を走らせた。長年、低迷を極めた画家としての父が、「母子相姦の図」で、一躍世間の話題をさらったのは、それから半年ほど後のことである。ちょうど、ぼくが十六歳、母が三十八歳の年であった。
その後ぼくと母は、父と離れて暮らし、父が時おりぼくたちの住居に訪ねてくることはあっても、共に暮らすことは二度となかった。
それからのぼくと母が、どのような関係を保っているか、今は言いたくない。
(了)
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