告白=三田村祐二
【2】拘束
余談ながら、私はそれまでにも二人の女性とのSMプレイの経験を持ち、縄さばきには多少の自信を持っていた。
ブラウスを脱いだ妙子は、ブラジャーをつけたままで私のほうに向き直り、両手で後ろ髪をかき上げた。
(ははあ、悩殺ポーズで幕を下ろそうって気だな。そうはいくかい)
私は心の中で思い、実際、妙子がポーズだけでかわすつもりだったことは後から本人が語ったことだ。
しかし、その時の私は、冷静になろうと努力しながら、
「奥さん、俺は童貞の坊やじゃないんでね、そんな格好をしてもダメだ。淫乱な人妻にはお仕置がいる」
そう言い放って妙子の両手を背中にねじ上げた時、彼女は顔をゆがめて抗議した。
「い、痛いっ。な、何をするのよ」
それに対し私の返事は、
「おまえのような淫らな女は、両手の自由を奪ってやるんだ」
というものだった。が、妙子は、
「し、縛られるなんていやっ。大声を出すわよ」
と言って、なおも抵抗を示した。
それは当然であろう。両手を縛られたりすれば、最悪の事態が訪れても避ける術がなくなってしまう。SMマニアの心情を理解せぬ常人から見れば、両手の拘束は即、貞操の危機を想像してしまうのも無理からぬことである。
妙子の抗議、抵抗に対して、私には強味がある。「大声を出すのも騒ぐのも奥さんの勝手だが、そうすりゃあアパート中はおろか、勤め先までにも昨夜の件を言いふらして回るんだからな」
この一言で妙子の抵抗は弱まった。それ故、私は何なくこの未亡人を後ろ手に縛ることが出来たのである。
「し、縛るなんてひどいわ。ほどいて、大声を出したりしないから。ねっ」
急に妙子は哀し気な表情になって許しを乞うた。
だが、私のようなサディストにとって、弱味を握られて後ろ手に縛られた人妻(正確には未亡人だが)を前にして、はいそうですかと縄を解くことなど、出来ない相談である。
私は机上のカッターナイフを手に持ち、
「このブラジャーは邪魔っけだねえ奥さん。せっかく魅力的なオッパイをしているんだから隠しておくことはないでしょう」
言うないなや、私は左右の肩ヒモをナイフで切った。
「ううっ、いや」
妙子は呻き声を上げたが、私がさらに背中のホックをはずすと、プリン、といった感じで左右の乳房が露になった。
妙子の乳房は適度な盛り上がりを見せ、子供を産んだためか、乳首はやや黒っぽくなりかけていたが、それはツンと上を向き、また乳輪も小さくて、男の目を楽しませるには十分なオッパイであった。
「ここまでにして。ね、これ以上はダメよ」
そう言う妙子には、先ほどの優越感はすでにない。だが、
(ここからが本当のSMプレイさ)
私は心の中で思っていた。
押入れから回数にして何十回か女体をしめ上げた縄を取り出した私は、許しを乞う妙子を無視して、乳房の上下を四巻きずつ縛り、さらに首縄をかけてその縄尻を後ろ手とつないで引き絞り、高手小手の緊縛姿を完成させた。
「ああ、痛い。それに苦しいわ。こんなに私をがんじがらめに縛り上げてどうしようっていうの」
妙子は吐息と共に私に尋ねた。
それに対して私が、
「奥さんのような女には縄が似合いさ。これから死ぬほど恥ずかしい目に合わせて、責め嬲ってやるから覚悟しな」
と言うと、妙子は急に表情を変え、
「三田村さん、あなたSMの趣味があるのね。私、怖いわ。ねえ、お願いだから許してよ。かんにんして下さい」
哀願口調でそう言った。
だが私は、
「奥さん、謝る必要はないわけだろ。むしろ悪いことをしてるのは、俺のほうなんだから、許しを乞うのはこっちだぜ」
口元に皮肉な笑いを浮かべて言ったのだった。
(続く)
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