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▼ 読者体験手記「山寺での緊縛」【3】
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告白=峠一秋 (仮名)


マニア男性が体験したスリリングな野外撮影。女性を口説いて実現にこぎつけるまでの繊細な心の動き、撮影現場での緊張とハプニング……。『S&Mスナイパー』1981年12月号に掲載されたリアルな体験談を、再編集の上で全4回に分けてお届けしています。


哀れな姿

彦根駅前のプロムナードで車を止めて待っているが、約束よりも10分過ぎているのに来ない。一夜考えてみて、昨夜は酔ってもいたし、考えが変わったのだろうか。

といって昨夜のスナックへ、どうなったか聞きに行くわけにもいかない。そんなことを考えていると、エミが横断歩道を小走りに渡ってくるのが見えた。

名神高速道路を一路西へ走らせる車中で、私はエミに言った。

「エミちゃん、無理を聞いてくれてありがとう。写真撮らせてもらったら何かお礼をしたいけど、ほしいものがあれば言ってごらん」
「お礼なんか、いらないわ。でも写真ができたら頂戴ね」

エミは言った。 陽も斜めに傾き、涼しい風も吹いてきた。ロケ予定の山寺まではもう少しの距離であるから、エミにその旨言って車を走らせた。

ロケ現場に着くと、私は、さっそくトランクから緊縛用のロープと、カメラの入ったケースを出してきて、一緒に来るように、エミをうながして歩き出した。

林の中のゆるい登りの石段は、下草とこけなどで濡れているような感じであった。

まだ暗くなってくる時刻でもないと思っていたのに、茂み深い森の中でもあり、山門のあたりはすでに写真撮影の限界を通りこした暗さになりつつあった。

お堂の前の、地面の乾いたところを選んでシートを広げ、この場所でエミに洋服を脱ぐように命して、縄の準備にかかった。

エミは、スリップの紐に手をかけて、ためらいながら私のほうを振りかえって、「全部脱ぐの……」と、上目遣いに聞く。

「お堂や石灯籠の前でのスリッフ姿は、あまりマッチしないと思うけれどな」
「でも裸はいやよ」
「だからこれを湯文字のかわりに腰に巻いて、ムードを作るんだよ」

そう言いながら白い半透明のビニールシーツを手渡してやると、少しはにかみながら、スリップの上から巻いてみて、またも私の顔を見ながら、ためらっている。

早くしないと人が来ても困るし、暗くなってくるから、私としては急ぎたかった。言葉も少し荒々しくなってきながら、スリップを脱がせ、後手に皮手錠を取り付けてやる。と、エミは急におとなしくなり、いわれる通りに膝をついて、縄のかけやすい姿勢をとった。

工ミの身体は、もうどうにでもして下さい、と言っているようにも思えてきたりした。 

胸の上下と二の腕にロープをかけてから、縄尻を首の両側を通して後ろ側へ渡し、その端を後手首にかけて吊り上げたから、両方の後手は見事に高手小手となってしまった。

ごく薄い黒い色のゴム布を、口にかけて締め上げ、二回巻いたあと、鼻にもかけて顔半分に猿轡をかけ終わった。

エミは大変苦しいらしく、両肩で大きな息をくりかえしながら、「ムム……」と呻いて、首を左右に振って助けを求めてきた。

「そうだよエミ、猿轡は苦しいものなんだ」

苦しいわけである。ゴムは通気性がないのだから、これで鼻も口も閉じられたのでは、呼吸ができないわけである。

鼻の両側に指をさし入れて、ゴム布を前へ伸ばしてやり、その間に息をさせてやるのであるが、手を放すとまたゴムは締まって息ができず、苦しくなるのである。

つまり後手に縛り上げられて自由を奪われたエミは、もう今は呼吸の自由もないのである。それは完全に私の思い通りになるということであり、どんな要求にも従うしかないということだ。

一寸でも抵抗をしようとすると、もう息をさせてもらえないかも知れないのである。

時々、猿轡のすき間から呼吸をさせてやりながら、お堂の濡れ縁に座らせて、正座した足にもロープをかけ、私は何枚かのシャッターを切って緊縛写真を撮りつづけた。

エミは何度も呻きながら、首を激しく左右に振り、猿轡をとってくれと言っている様子であった。苦しいに違いない。濡れ縁と段柱の撮影を終わってから、私はゴム布の猿轡だけ下へずらせてやった。が、まだ口は閉じられているので、言葉は話せない。

夕暮れが、迫ってきたのであろう、撮影のほうも大分、やりにくい状態になってきていた。

森の中は静かである。私たち二人の他には、誰も居ない。時々、鳥の鳴き声が遠く近く聞こえてくるだけである。夜中ならとてもうす気味悪いであろう、古寺のたたずまいである。

夜間撮影の緊縛写真なら、これまでたくさんの機会があっていろいろなポーズのものも実際モノにしている私だったが、背景の写っているものを、どうしても撮りたかったのである。

私はエミに命じて本堂下の石灯籠を背景にして、地面へ正座するポーズをとらせようとしたが、これまた、なかなか座らない。おそらくエミにしても、裸の姿で地面へ正座するのは生まれて初めてに違いない。

先程、鼻の部分だけ許してやった生ゴムの猿轡を、もう一度呼吸のできない位置に掛けなおしてやってから、さらに残っているロープを鞭がわりにして、尻を打ってやった。

するとエミは、とうとう正座して、ゆっくりと首を振り、猿轡を外してほしいようなジェスチャーを示し始めた。

私はそれでも鼻の部分のゴムをすこし持ち上げ、しばらく息を吸わせてやってから、また呼吸のできない状態にもどし、手早く何枚かのシャッターを切ったのである。

「さぁ立て」

もう私の言葉は、荒々しくなっている。

「ムム……」

どうやら、もう許して下さい、と言っている様子であるが、私のほうは山門のところにある仁王さまの前で二、三枚撮りたいので、場所を移動することにした。

「立て、さぁ歩け」
「ムム……」

いくら薄暗くなっている山寺の森のなかとはいえ、エミは全裸のうえに半透明の小さなビニールの薄い布を一枚、腰に巻きつけているだけの姿なのである。ぬるぬるした山土と、苔の生えた本堂前の石段を、裸足でしかも後手猿轡の見るもあわれな姿で、歩かされているのである。

加えてごくわずかに洩れてくる空気以外には呼吸も自由にならないのだ。

エミは緊縛写真のモデルを引きうける気持ちになった昨夜、このような哀れな姿の自分を、しかも息すらも自由にならない、この自分の今の姿と苦しさを想像しただろうか。

私はエミを山門の太い柱に縛りつけて何枚かのシャッターを切り、さらに山土のベトベトした地面へ正座させて、写真を撮りつづけた。
(続く)


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