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▼ 読者体験手記「山寺での緊縛」【4】
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告白=峠一秋 (仮名)


マニア男性が体験したスリリングな野外撮影。女性を口説いて実現にこぎつけるまでの繊細な心の動き、撮影現場での緊張とハプニング……。『S&Mスナイパー』1981年12月号に掲載されたリアルな体験談を、再編集の上で全4回に分けてお届けしています。


無言の意味

仁王さまの恐ろしい顔を背景にシャッターを切りつづけていると、何となく後ろに人の気配を感じた。急いで振りかえってみると、ゆるい長い石段をアベックが登ってくるではないか。

私はうろたえた。

カメラを地面に置いてエミのところへかけ寄り、それを告げた。

このときエミは仁王さまのほうに向かって、後手の手首をカメラ側にむけたポーズで立たされていたのである。

いつも準備してあるマントはいま、本堂の前で着がえたところに置いてあって、取りに行くわけにもいかない。

猿轡だけを鼻から下へずらせてやって、背中の後手の部分が見えないように、エミの後ろからかい抱くようにして、小走りに本堂への石段を急いだ。

このときには、もうアベックは、すく背後まで来ていたのである。

見られたに違いない。エミは後手のままであるから、急いでもバランスが悪くて歩きづらいので、つい抱いて走ったような有り様であった。

ここでマントをエミに巻きつけてやり、さらに本堂の裏まで走った。途中、くもの巣が顔にくっついて、とても気持ちが悪かったのだけれど仕方がなかった。

人目のないところでロープを解いてやって、エミの洋服をとって来てやろうと、お堂の濡れ縁ぞいに歩いて出た。 ところが突然、アベックの男が、「忘れものですよ」と、私のカメラを差し出してくれたのだ。

礼を言って受け取ったものの、明らかに、事情を知ったような顔つきであった。

エミの下着や洋服をひとまとめにしてからシートに包みこみ、カメラのケースを脇にかかえて通りすぎようとしたが、アベックの女性のほうは、恥ずかしい様子をして、とても私のほうを見るどころではない雰囲気であった。

ただ、男のほうは、じっと見送りながら、にんまりとしているようにも受けとれた。

それもそのはず、エミのブラジャーの紐とか使い残しのロープの端などが、抱えているシートの周囲から、たれ下がっていて、だれが見てもそれとわかる有り様であったから、にんまりも無理のないところであったろう。

本堂の裏側の縁側では、エミが小さくなってうずくまりながら、ふるえて待っていた。

「見られたようだよ、すっかり」
「恥ずかしいわ……わたし……」
「悪かったよ、よく気をつけていればよかったのに、ついポーズにばかり気を取られていたから」
「いいのよ。気にしないで」

エミはこう言いながら下着を順につけてゆき、足についた土をはらい落として、ストッキングを穿いたやっと安心したのか、一寸だけにっこりとして、私の顔をのぞくように見上げた。

近江八幡の町はずれを少し入った空地でしばらく待たされたあと、エミは大きなバッグを二つ持って、小走りに出てきた。

山寺を出た時からずっと無言で、行き先を言う以外には、ほとんど一言も口をきかないままここまで来ている。

名神高速に入って、快調に走りだしてから、少しだけ話をした。

「エミ、痛かったかい」
「……」
「エミ、気分でも悪いのか」
「いえ、なんでもないの」
「どうしてそんなに黙ってるの」
「どうしてって、あんまり、いろんなことがあったから、今一寸気持ちが整理できないみたい。ごめんね……」

それでも二、三の会話から、エミは決して今日のプレイにこりている様子ではないし、上手にリードすればM女として育てられるのではないかとも私には考えられた。

告白=峠一秋


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