投稿者=青山美紀子
【3】もうひとつのバージン
彼の本当の仕事を教えられたとき、私はすでに彼から離れられなくなっていました。高価な指輪や装身具をいくつもいただいていましたし、お恥ずかしい話ですがセックスのよさにすっかりのめり込んでしまってもいたのです。
私にはまた、桂木の獣臭のする体が好きでした。彼には私のほかにインドネシア人の愛人を持っていて、その人を香港に住まわせているということでした。彼女に彼を奪われぬよう、私は彼とのベッドではフェラチオを多用しました。人一倍潔癖症の私は、フェラチオなどまったく初めての経験だったのですが......。
「でかいだろ! 根元までしゃぶれ!」
桂木は大の字になって言い、私は髪を乱して言われるとおりにしました。喉の奥に太くて固いものがごつごつと突き当り、息苦しいほどでした。でも私はその苦しささえも、彼が喜んでいるのならと思って甘んじて受け入れるようにしていました。いつしか私は彼を愛していたのかも知れません。
狡猾な桂木は、そんな私の従順さ、真剣さを計算に入れて行動していたのです。やがて彼は、本格的なサディストの牙を剥き出しはじめました。
桂木と最初の関係を持ってからちょうど2カ月後、香港のEホテルでのことでした。
フライトの前後というのは、私たちスチュワーデスはかなり興奮するものなので、しばしばお酒を飲んで心身を鎮めようとします。お酒を飲まない人はセックスを楽しみます。桂木と出逢って以来、私はその両方を嗜むことが多くなっていましたが、その日は生理日でした。
「ごめんなさい、きょうはアレなの」
桂木とブランデーを飲んだ後、ベッドに入ったところで私は言いました。
「だからおフェラだけにしてね」
すると彼はニヤリとうすら笑いを浮かべて、こんなことを言うのでした。
「そうか、それなら君のもうひとつのバージンを味わいたいね......」
「もうひとつのバージン......?」
彼の熱く潤んだ目が獣のように生臭く光り、私は意味が分からなくて首を傾げました。まるで淫らな虫のようによく動く彼の指が、私のアナルをそっと探ってきたのはそのときです。
(続く)
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