告白=小泉博敏(仮名)
【4】歩行困難
秋の陽射しは、いや、行き交う人々の目が恭子の目にはさぞ眩しかったことだろう。
霜降橋から国電駒込駅へ登るだらだら坂の商店街である。
恭子の足の運びは、まことにおぼつかない風情。ハイヒールの足を内股にして歩く。しかも、歩幅が僅かである。だいたい普通の人の半分。足の運びは普通の人の二倍の時間。合計、普通の人の四倍の時間をかけて歩いていることになる。
家を出てから、もう、かれこれ十五分くらい経っている。普通なら駅まで七、八分の距離である。この調子だと、さらに十五分はかかりそうである。
「ね、先生。腕を貸して下さらない?」
恭子が媚びるように懇願する。
ボクはさっきから恭子の後ろへついて、その歩きにくそうに振れる腰を眺めたり、彼女を通り越して、大分先へ行ってから、くるりと振り返って、よたよたと登ってくる彼女の歩き振りや表情を眺めて楽しんでいる。
腕なんか貸したら楽しみがなくなってしまう。とんでもない。
「ほら。駅はもう見えてるじゃないか。もう少しだ。頑張って……」
助けてもらえそうもないと判断した恭子は、下唇を噛んで、さっきよりも歩幅を長く、足の運びも早くして歩き出した。
どうやら、意地が手伝っているようだが長く続かなかった。
精神力はあっても、肉体は正直だったというわけだ。恭子は、パチンコ店の前の電柱に寄りかかってしまった。
恭子は大きく肩で息をした。こんな姿で街を歩くことになるなんて、恭子にとって全く思いがけないことであったに違いない。
アヌスバンドを嵌められたり、電動こけしを押し込められていた時は、むしろ甘い期待に胸をときめかせているように見えた。これから始まる淫らなsMプレイに、淫らな想像でも膨らませていたのかもしれない。
ところが、実際はそんな甘いものではなかったのである。
アヌスバンドをしているとは言うものの、それは紐のようなものにすぎない。ほぼ全裸と同様である。羽織っているコートはボタン一つで留まっているだけ…… 肩が抜けても裾が翻っても、恥ずかしい裸体が道行く人々の目に曝されることになる。ヌードだけならまだしも、上半身は緊縛され、下半身には前後に楔をぶち込まれているのである。
まず、そうした羞恥が恭子を襲ったことは確かである。
次に、歩く度にヴァギナとアヌスが刺激され、それぞれの肉襞がこねくりまわされて相当な苦痛を呼んでいるはず。その上、姿勢によっては小陰唇がえぐられ、クリトリスがくびられる。叫びたくなるような痛さであろう。
さらに、緊縛されて盛り上がった乳房の先端には括られて充血した乳首がある。体を動かす度に、乳房が揺れる度に、ぐいぐいと引き絞られ痛みを募らせているはずである。
そんな恭子を多くの人たちが怪訝そうに見ながら、振り返りながら、通りすぎて行く。恭子はコートを透かし見られているかのように、身も竦ませながらオドオドと歩いていた。
精神面と肉体面との双方に厳しい苛虐が加えられていたわけだ。
(続く)
上へ |
カテゴリ一覧へ TOPへ |
■広告出稿お問い合わせ ■広告に関するお問合せ ■ご意見・ご要望 ■プライバシーポリシー ■大洋グループ公式携帯サイト |