告白=小泉博敏(仮名)
【5】思わぬアクシデント
「先生。アタシ、もう歩けないわ」
電柱を背にして恭子が呟いた。
「どうした。もうひと頑張りだ。しつかりしろ」
ボクは敢えて強く言う。
「だめなの、先生。だって……」
「だって? だって、どうした」
「だって……あそこんとこ……くいこんで……痛いんですもの」
「どうれ、見せてごらん」
ボクは理沙の前にしゃがんで、コートの裾に手をかける。
「いやっ、先生。こんな所で……」
思いの他、艶のある甘えた喋り方。
「それにね、先生。先生、さっき、メンタムつけたでしょ。それが、あそこへ入って……」
念のためにたっぷりとスベスベツルツルに塗っておいたのが、どうやら効いてきたらしい。
「いいじゃないか。どうせ、擦り切れるんだから、先に薬を塗ってあると思えば……」
「うんっ。先生の意地悪っ」
恭子のこんな艶かしい言い方は初めてである。
ははん。恭子ちゃん、大分、感じてきているらしい。
「ねえ、先生。このパチンコ屋でちょっと休ませて……」
時計を見た。午後三時である。時間はまだありすぎる程ある。ボクはOKした。
ほっとした顔つきをした恭子は、自動ドアを入って二、三歩行った所で足をもつれさせた。ハイヒールでパチンコ玉を踏んだらしい。両手を拡げてバランスをとることのできない彼女、倒れるのは目に見えている。
上体が斜めになった。このまま倒れたらどうなるか。手で支えることのできない恭子は頭を打って大怪我……そればかりか、あられもない肢体が丸見えになってしまう。
もう、片足が床を離れている。危機一髪、倒れる前に恭子はボクに抱き支えられた。
こんなことは計算には入っていなかった。ボクは冷や汗をかいた。腋の下から、ふーっと、冷たい雫が脇腹を伝わるのがはっきり判った。“肝を冷やす"とはこのことだろう。
「無事でよかったね」
声をかけて恭子を立たせようとしたが、彼女の返事がない。中腰になっている顔を見ると、まっ青である。
「どうした? 立てないの?」
彼女の、コートの裾の乱れや、胸元の拡がりを直しながらボクは聞いた。
「こけしが……」
蚊の鳴くような声で恭子が囁く。
ボクは、こけしがヴァギナの中へ、すっぽり嵌まり込んでしまった……と解釈したんだが、よく聞いてみるとこれが逆だったのだ。
今のショックで無理な力が働いたのか、こけしがアヌスバンドの紐から外れてヴァギナから抜け出して来るのを、膣括約筋をフルに締めて押さえているんだけども、少しずつ抜け出して来るし、ちょっとでも膣の力を抜こうものならたちまち飛び出して来そうだというのである。
(続く)
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