投稿者=良田博美(仮名)
【5】初対面の男とまっすぐにホテルへ
私は男の名も知らない。ここでは仮にNとしておこう。
「お忙しいのでしょうね、きっと」
私の様子を見てなんと思ったのか、Nは丁寧な口調で、「ぼくは、今日は時間をもてあましています」と、きっぱり言いきった。
「一日、お相手しますよ。どうぞ」
優しさのなかにも、威厳をこめてNは言う。この人にもてあそばれよう、今日だけ……。私は思った。
Nは、見知らぬ私の目を見ただけで、私の心を読みとったかのように、直接車を郊外の静かなホテルに横づけた。
(この文章を読んでいる人は、見知らぬ男に突然声をかけた私の行動や、Nのこうした反応を、「どうかしているのではないか」などと疑うかも知れない。が、求め合う男と女というものは、概してこういうものではないか。私自身、思い返せばよくこんな大胆なことができたものだと思う。けれどその場その場では常に確信を持っていた)
Nと私は、はっきりと、互いの求めているものを感じあっていたのだと思う。そして、それこそが男と女の現実なのだと思う。
Nの口数は多くなかった。ただ、胸元から男用の香水が匂っていて、黙っていても私の感覚をくすぐりつづけた。私の好みにぴったりのN。キザっぽくて、そんなところがかわいくて、それでいてマゾの私の花芯が疼いてくるような尊大な態度。
ホテルの部屋に入ると、Nは私を召し使いでも見るように一瞥し、「お風呂にはいって洗ってきなさい」と言う。私は素直に「はい」と従った。
(続く)
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