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▼ 読者体験告白「一度だけのアバンチュール」【5】

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投稿者=良田博美(仮名)


夫に言えない性癖――。鬱積した欲求不満は、ある日、人妻を危険な行動に駆り立てる。初対面の男に熟れた肉体を差し出し、マゾの悦びに溺れていく淫婦の長い1日は、彼女に何をもたらしたのか。『S&Mスナイパー』1982年7月号に掲載された読者告白手記を、再編集の上で全8回に分けてお届けしています。


【5】初対面の男とまっすぐにホテルへ

私は男の名も知らない。ここでは仮にNとしておこう。

「お忙しいのでしょうね、きっと」

私の様子を見てなんと思ったのか、Nは丁寧な口調で、「ぼくは、今日は時間をもてあましています」と、きっぱり言いきった。

「一日、お相手しますよ。どうぞ」

優しさのなかにも、威厳をこめてNは言う。この人にもてあそばれよう、今日だけ……。私は思った。

Nは、見知らぬ私の目を見ただけで、私の心を読みとったかのように、直接車を郊外の静かなホテルに横づけた。

(この文章を読んでいる人は、見知らぬ男に突然声をかけた私の行動や、Nのこうした反応を、「どうかしているのではないか」などと疑うかも知れない。が、求め合う男と女というものは、概してこういうものではないか。私自身、思い返せばよくこんな大胆なことができたものだと思う。けれどその場その場では常に確信を持っていた)

Nと私は、はっきりと、互いの求めているものを感じあっていたのだと思う。そして、それこそが男と女の現実なのだと思う。

Nの口数は多くなかった。ただ、胸元から男用の香水が匂っていて、黙っていても私の感覚をくすぐりつづけた。私の好みにぴったりのN。キザっぽくて、そんなところがかわいくて、それでいてマゾの私の花芯が疼いてくるような尊大な態度。

ホテルの部屋に入ると、Nは私を召し使いでも見るように一瞥し、「お風呂にはいって洗ってきなさい」と言う。私は素直に「はい」と従った。
(続く)


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