告白=小泉博敏(仮名)
【9】蠢く指先
好色そうな中年男が恭子の後ろに居る。またもや、痴漢行為挑発にチャレンジ。
ボクは恭子のコートの合わせ目に手を差し入れると、アヌスバンドを小さく揺すった。揺するのは小さくても、感じ方は大きい。恭子は思わず尻をくねらす。中年男、反応なし。
さらに、ボクは、アヌスバンドに掛けてある電動こけしのスイッチボックスを探り当てると、スイッチを入れた。
ぶるん、ぶるん、と、こけしはこもった回転音を出してヴァギナを震動させているはずだけれども、電車の騒音でその音はかき消されてしまっている。しかしその代わりに、恭子の太腿から妖しい震動が伝わってくる。
――先生。ダメッ。
恭子の目がボクをたしなめる。
恭子の顔は紅潮し、艶めかしい襟足にはべっとりと汗が滲んでいる。
ひと揺れして、電車が停まった。
中年男は、そ知らぬ顔で降りてしまった。努力の甲斐もなく、ボクはパイプレーターのスイッチを切った。電車の中には痴漢が多いという話なのに、どうしたことか恭子に仕掛けてくる奴は居ない。待ちくたびれてボクは自らの手を出した。
まず、横から尻を撫でてみた。びく、ぴくっ、と、うごめく。
電車の揺れを利用して前へ廻った。
左足を恭子の足の間へ入れた。
コートの裾が割れる。
ズボンを透かして湿っぽい熱気が感じられる。まるで、蒸し風呂へ片足を入れたようである。防水コートの中で、恭子の体は蒸れていた。
入れた足を摺り上げる。股の付け根で行き止まる。そこの疼きが、ボクの膝に伝わってくる。
ぐいぐいと、こじり上げると、きゅっきゅっ、と、両の太腿で締めつけて、恭子が反応している。
やがて、ボクは膝に異様な感じを受けた。じっとりとした熱い感覚は最初からあったが、それよりも水っぽい感じである。
膝を引き出して、窮屈な格好で膝小僧の上あたりを見て驚いた。長さ十センチ、幅五センチくらいのスペースが、びっしょりと濡れているのである。
ぷうん、と、女陰の匂いがたちのぼってくる。その後から、汗ばんだ女の体臭が、むせかえるように迫って来る。
恭子は、しとどに濡れそぼっていたのである。それに、汗が追い打ちをかけて、この調子だとパンティをつけていないからストレートに溢れ出して、腿の内側を伝ってストッキングまで濡らしているかも知れない。
そのことを恭子に教えて、恥ずかしがらせてやろうと彼女の顔を見たら、口を半ば開けて恍惚の表情である。コートは元に戻したにも拘わらず、また、あの、むせかえるような女の匂いが鼻をついてくる。
よく見ると、コートが動いている。さらに、よく見ると、恭子の後ろに居る三十歳前後のセールスマン風の男が、彼女のコートを捲くり上げて、尻の割れ目に手を差し込んでいる。
男も、恭子がとっぷりと濡れていることを指先で感じとったであろう。にんまりとほくそ笑むと、さらに大胆に迫っていく。
ボクは、にわかに、この男に嫉妬を感じた。待望の痴漢が現われたというのに、こんな男にポクの恭子をこねまわされてたまるかと反発する感情が湧いてきた。
ボクは、恭子の後ろへ手を回すと、彼女の手首の緊縛が見えるまでコートの裾をたくし上げた。男は、目の前にそれを見ると、あわてて恭子の股倉から手を引き抜いた。裸。こけし。縛り……男の驚きが、明らかに顔に出た。
ボクと目が合った。男は目をそらした。次に停まった駅で、人波に押されながら、その男は、そそくさと降りて行ってしまった。
それはどこの駅か判らなかったが、ここで一気に乗客が減って車内はがらりと空いてしまった。混雑から解放されたボクと恭子は、互いに顔を見合わせて、ほっと、ため息をついた。
「先生じゃなかったんですか?」
照れ隠しのように恭子がとぼけて訊く。
「前に居るボクが、後ろからできるはずないだろ」
そう言いながら、ボクは、膝小僧を恭子に見せた。
「あらっ」
恭子は即座に理解した。股をぴったり合わせた。
「匂うだろう? あそこのにおい……」
ボクが囁くと、彼女の全身が固くなった。
ボクは、恭子のコートのボタンを外した。
「いけません。先生」
恭子が、顔を強く左右に振っている。
ボクは、コートをすばやく煽ると、また、ボタンをかけた。前の座席に座って雑誌を読んでいた眼鏡の紳士が、鼻をうごめかしながら、怪訝そうに左右を見回した。
(続く)
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