作=羽鳥止愁
【4】
「これで三十点だ、朱美くん。あと四十点、どんな答案を出すか楽しみだな」
「問題によりますわね。先生。私の答案の出し方は」
必死の抵抗か。自分への気力の鼓舞か。朱美は乾く唇で真鍋に対した。
「楽しみだね。じゃ、こちらも練った問題を考えよう」
小刻みに震えている朱美の後ろ姿を見ながら、真鍋はたばこに火をつけた。
「セックスにおける牝大の地位、嗜好度を、SM風に述べよ。というのはどうかね。SMって言葉、もちろん知っているだろう?」
「変態のことですわね」
「フフ、変態か。人間は皆変態さ。それを表の生活に出すか出さないかだ sとMなんて誰でも持っている。君だってさ、朱美君。もっとも、君の場合はsのほうが強いようだね。Sの女王様って感じだね、君の性格、雰囲気からだとね」
「お生憎さま、私にはそんな趣味はございませんわ、先生。どなたかと違って」
「sの似合う君に、今日はMの感覚を味わわせてあげよう。いずれ君がSの女王として君臨するときの参考にね」
(何をしようってのさ、助平じじい。どうにでもしやがれ)
「さて、それじゃ、これから牝犬朱美の忠誠心を見せてもらおうか。四十点の答案を出せるかどうか。君はわたしに飼われた牝犬だからね。ハッハハハ」
(何を勝手なことを、クソじじい)
「それじゃ、まずそこで四つん這いだ。尻振って媚を売ってみたまえ」
(チクショウ。変なことを。どうする、朱美……私にそんなことができる……?)
「どうしたんだね。帰るかね。三十点はあげるよ。白紙の答案で三十点もらえれば御の字だろう」
朱美は膝を折った。両手を着き、真鍋には見せられない口惜し涙を滲ませた。煌々と輝く明かりの下、四つん這いの痴態には、最早、自分の羞恥は、後ろから覗く真鍋にはあからさまであろう。
(続く)
上へ |
カテゴリ一覧へ TOPへ |
■広告出稿お問い合わせ ■広告に関するお問合せ ■ご意見・ご要望 ■プライバシーポリシー ■大洋グループ公式携帯サイト |