作=羽鳥止愁
【5】
「まず、牝大の曲芸を見せてもらおうか。その椅子を登って、向こうへ下りて、またこっちへ戻ってくるんだ。もちろん、四つん這いでね。犬だから」
今まで座っていた肘掛け椅子が眼の前にあった。
(ええい。こうなったら、何でもやってやるよ。見たけりゃ、見ればいいさ。見せてやる。拝ませてやるよ)
朱美は椅子に手を掛けた。這い登り、四つん這いで椅子に乗った。
「肘掛けに膝を着いて、大股開いて、お尻を振って、キャンとでも鳴いてみるか」
(鳴いてやるよ、みてな)
朱美は膝を開いた。両手を背もたれの上におき、左右の肘掛けに膝を乗せた。グイッと尻を突き出してやった。
真鍋はカメラを操作していた。モニターには、画面一杯に朱美の突き出した双臀が映っている。ぱっくりと弾けた薄紅色があからさまにのぞいていた。すぐ上のセピア色も、あえかに緊縮を繰り返して、画面を彩っていた。
「キャンはどうしたキャンは」
「……キャン……」
口惜しさを飲み込んで朱美は鳴いた。
「キャン、キャン、キャン、キャアーン」
わざとしなを作って、悩ましく鳴いてやった。
「フフ、色気たっぷりな犬だな」
朱美はグイと腰を引いて、尻を突き出してやった。これみよがしに……。
「いったん、向こう側に下りて、這い登ってこい」
椅子の背から顔を出汁、朱美は真鍋の下卑た笑いを浴び、すぐにまぶたを伏せた。
乳房を晒し、うつ伏せって肘掛けに両手を掛けた。背もたれの上から両膝をいざり下ろし、肘掛けに両手両足を乗せた。
「顔を上げろ、俯いている犬などおらんぞ」
さすがに口惜しさは隠しようもない。惨めな肢体で、女の羞恥を全てあからさまに覗かせている。恥ずかしさは、顔をまともに見られているだけに、余計に口惜しさをつのらせた。
たわわに下がる乳房。開いた股間からそよぐ品のいい絹草。
自分で剃らしてみるか……。と、真鍋は思った。
(続く)
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