作=羽鳥止愁
【6】
「よし、下りてこっちへ来い。これを付けるんだ」
鎖に繋がった犬の首輪をデスクの前に垂らした。モニターにはぼやけた鎖の向こう側に四つん這いの朱美が映っている。刺激的な構図だ。
口惜しそうに朱美の顔がのけ反っている。真鍋に対する侮蔑のいろをはっきりとあらわしていた。
せめてもの抵抗であろう。そんなことはどこ吹く風と、真鍋はチャラチャラと鎖をチラつかせた。
「ほんとに変熊なのね、先生」
「おや、犬が人間の口をきくのかね」
「フン、変態じじい」
朱美はその鎖を荒っぽくたぐりよせた。
「これを付ければいいのね。付けてやるよ。これで先生、何点下さいますの?」
「そうだね。十点あげよう。それでは何点になるかね」
「四十点ですわ」
「あと三十点……」
首輪を付け、朱美は犬のおすわりのように座った。いかつい首輪は、華奢な朱美の首に痛々しかった。もっとも、それが真鍋には快い刺激になるのだ。
鎖は真鍋がしっかりと握っている。三メートルはあろう、長い鎖だった。かなり重い。
「よし、椅子に座って、両脚を肘掛けに載せて牝大のオナニーといこう」
「なんですって……!」
信じられないというように、驚愕の表情を真鍋に向けた。
「濡れて、気をやったら、二十点やろう。どうだね」
「いやよ、そんな」
「それが嫌なら、排尿と排便を見せるかね。どっちかだ」
「そんな。いやよ。あんまりよ、ひどいわ。ひどすぎるわ」
「sの女王様にもなろうって君が泣きを見せるのかね。経験はあるんだろう。淋しい夜なんか、ひとり慰めるんだろう。それとも何かい、男がいつでも用足せるのかね」
「あんまりです。いや。もういや。嫌ッ」
さすがに、二十歳そこそこの娘に、この経験は異常であった。鎖に繋がれ、犬のように堕としめられ、しかも、オナニーをしてみせろという。朱美には最初の威勢のよさは微塵もなかった。もう、帰りたいと思った。単位なんかいらない。
「先生、もういや。帰ります。もういやよッ」
「もう少しじゃないか、朱美君。オナニーしてみせりゃ、あと十点、もう終わったようなもんだ。それで卒業できるんだよ」
「そんなものいらない。もうイヤー」
感情的に朱美はわめきたてた。首輪を外そうとしている。
真鍋はカメラのスイッチを切り、デスクを離れた。
「いまさら、もうだめだよ。最後までやりなさい。そんなに難しい問題でもないだろう。途中で投げだすから君は駄目なんだ」
「いやよッ。やめて――」
真鍋は朱美の両手を背中に絞り上げ、後ろ手錠を掛けてしまった。
(続く)
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