作=羽鳥止愁
【9】
静寂がただよった。激しく掻き鳴らされていた琴の糸がプツンと切れてしまったような……。
真鍋は、そこにただよってくる牝の匂いを嗅いでいた。
しかし、愉悦を極めたその余韻にひたる余裕もなく、朱美は、今度は苦悶の呻きに悶えはじめた。
「せ、先生ッ、トイレに、早くトイレに――」
その時、ピンポンとチャイムが鳴った。
「誰か来たらしい。ちょっと待っていてくれたまえ」
「そんな! 先に行かせて。手錠を外して、足を解いて――!」
「ちょっと待っていたまえ。これをしておいてあげるから」
「い、いやいや。先生、お願いよ」
朱美の哀願をよそに真鍋は朱美の右手を背中に絞り上げ、再びうしろ手錠に留めてしまった。
「そんなッ。トイレに……。約束よ――」
「約束は守るよ。少し待っていたまえ」
白い瓢箪型をした小さな器具を持ち出した。
「栓をしておいてあげるから、しばらく、我慢するんだ」
瓢箪の太いほうを苦悶のアヌスに押しあてた。
「ヒャッ。ヤメテー、イヤー」
じんわりと押しつけられたそれは、周りの襞を押しのけ、やがて、すっぽりと包み込まれた。
瓢箪のくびれを括約筋が締め付け、白い陶器製であろうか、その半分が顔を覗かせて揺れ動いた。
真鍋は出ていった。口惜しさに、キリリと歯を食いしばり、朱美はなす術もなく、その瓢箪を締め付けていた。
しばらくしてドアが開いた。
「ああ、先生、早く――」
救けを求める朱美の眼に、一人の女子学生が映った。
「キャーッ」
お互いに顔を見合い、驚愕の瞳をぶつけあった。羽田ゆかり――同じゼミナールの学生だ。
「ハッ、いや、やめて――」
激しく揺れた。ガタガタと椅子が揺れる。ゆかりもその場に立ちすくんで動けない。真鍋はドアを閉めて鍵を掛けた。
(続く)
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