告白=氏家さと子(33歳)
【2】奇怪な自慰妄想
もちろんそんな自慰をしたあとの私は、内股が腫れあがって便所へもいけません。私はじっと腰をかがめて痛みが退くのを待っています。
そして私の脳裡には奇怪な幻覚が、現実とも悪夢とも知れずに明滅するのです。暴漢に縛られてお浣腸責めに遭っていたり、反対に美少年の青白い性器をくわえ、歯で咬み切っている光景など、とても口で言い尽せぬ淫らなシーンを私は描いているのです。
自慰というものはその行為を終えてしまったら、スカッと晴れるものではないでしょうか。よくわかりませんが男の人の場合、射精とともにスカッとするのでしょうが、私の場合は反対なのです。
縄を前後にこすっている間は手に力を入れているので、そんな空想や妄想に酔っている余裕はないのです。しかしプレイを終わったあと、私は存分に酔うことができるのです。
「ああっ……」
私は股間の痛苦に悶えながらも、その奇怪なSM幻覚――とでも申しましょうか――に、五分も十分もうっとりと陶酔することができるのです。
私は自分の性欲が他の女性とは、ずいぶん違うのだということがだんだんとわかってきました。それもただ違うのではなく、書道でいう前衛芸術のように次元の違うものだとわかってきました。
性器と性器を単に結合させたピストン運動――それを二次元のセックスとすれば、私のは三次元、四次元のセックスです。
いまにして思い当るのですがそういえば私は少女時代から、怪奇漫画や責め絵に強い関心と興味を寄せていたようです。映画もヒッチコックのスリラー映画などを観て、暗い映画館の中で自慰した記憶があります。
高校へ進んでからは男の人が見るSM雑誌を、古本屋でよく立ち読みしました。実現はしませんでしたが、SM雑誌の中に〈緊縛モデル女性求む〉などありますと、何度か応募してみたい誘惑に駆られたものです。
しかしついに私は自分がS体質なのか、M体質なのかわかりませんでした。暴漢に縛られて犯されたいときはMですが、美少年の性器を咬み切りたいときはSなのです。そんな私がお金を貯める以外、なんの能もないいまの夫と結婚したのですからこれはうまくいくはずはないのです。
(続く)
上へ |
カテゴリ一覧へ TOPへ |
■広告出稿お問い合わせ ■広告に関するお問合せ ■ご意見・ご要望 ■プライバシーポリシー ■大洋グループ公式携帯サイト |