闇の中の魑魅魍魎【10】
闇の中の魑魅魍魎【10】
身を挺して子供を守るべき両親は意外な行動をとった。
●人生の岐路
秋の日であった。
誠子は玄関の戸を開け、いつものとおり、
「ただいま」
と中に声をかけた。
普段なら、それでも、
「おかえり」
と母が返事をしてくれたのだが、その日は、何の反応もなかった。
おかしいな、留守かな、それにしては、玄関に鍵がかかっていないわ、と誠子が台所のガラス戸を開けた瞬間、誠子の目に飛び込んできたのは一人でビールを飲んでいる、いつもの男であった。
誠子は男の顔をみた途端、それこそ蛇に睨まれた蛙のような状態になってしまった。
最初に男を見た時から、誠子はその目付き、顔付き、全体に漂う雰囲気が恐ろしかった。
人間的感情の起伏が全く感じられない、冷酷な感じのする男であった。
この男なら平気で人を刺し、血が飛び散るのを眺めていられるだろうと誠子は思ったことがあった。
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