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▼ されど俺の日々【15】

されど俺の日々【15】


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文=法野巌
イラスト=笹沼傑嗣

されど俺の日々【15】

次々と凶悪な犯罪を繰り返す正太の犯罪者的性格は中学の頃から如実に現れていた。

●襲撃

「ひえっ」

二人は同時に叫んだ。

「おい、死にたくなかったら、俺の言うとおりにしな」

どうやら相手は極めつき粗暴な性格異常者らしい。
これ以上抵抗したり機嫌を損ねるとどんな仕打ちを受けるかもわからないという恐怖感が、一雄を金縛りにしてしまった。
男はそんな一雄の様子を見て美代子を後部座席に押し込み自分も後ろに移った。
そしてナイフの刃を一雄の頬にピシャピシャと音をたてながら叩きつけ、

「おい、俺の言うとおりにしないと、女もお前も命はないからな。俺は前科三犯だ。刑務所なんか少しも恐くない男だよ、よく覚えておけよ」

男は、××山へ車を走らせるように命じた。
××山は、町の外れ、五キロメートルほどの所にある山で夜は勿論、昼間も人影のあまり無い寂しい所であった。
そんなところではあるが、山奥にダムがあるため道路はよく整備され、車でも相当深部まで乗り入れることが出来た。
一雄はそんなところへ男を乗せていったら、何をされるかわからないと一瞬ちゅうちょしたが、「おい、聞こえないのか」というドスの効いた男の声を耳にすると、拒絶する勇気も消え去りあとは男の言いなりだった。
山への途中、後部座席からは美代子の、

「嫌、やめて」

とか、

「助けて一雄さん」

とか助けを求める声が聞こえてきた。


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