闇の中の魑魅魍魎【17】
闇の中の魑魅魍魎【17】
身を挺して子供を守るべき両親は意外な行動をとった。
●質草
誠子が玄関の戸を開けると、誰か客がいるらしかった。
一階の六畳間で話し声がする。
例の男だった。
逃げよう。
誠子がカバンを階段の手摺の横において、靴を履こうとした時だった。
男が近づいて来て、
「おい、待たないか、こっちへ来い」
と、声をかけた。
誠子は恐怖のあまり、一瞬のうちに凍りついたようになってしまい、体を動かすことが出来なくなってしまった。
男が誠子の脇に手を回し、六畳間に引っ張っていった。
中には、父と母が頭を垂れて、小さくなって坐っていた。
大分脅されていたのだろうか、二人とも顔面が蒼白になっていた。
「お父さん、いやよ、助けてよ」
それだけ言うのが精一杯であった。
あとは声にならなかった。
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