殺意の原点【1】
殺意の原点【1】
棄てられていた若い女性のバラバラ死体は、性器を抉り取られていた……。
●バラバラ殺人
少年の非行は社会を映す鏡だといわれる。
第一の発見者は、毎朝犬を連れて散歩するのを日課としている付近の老人であった。
その朝は妙に犬が興奮し、しきりに老人を草の繁茂した方向へと引っぱって行きたがった。
老人も何やら不審に思い、犬をそのまま歩かせ後に従った。
緩やかな傾斜の江戸川下流の堤防を降りて行くと、名も知らぬ無数の夏草の群生がある。
繁みの中へ向かって走り出した犬は、やがて歩みを止め、激しく吠えた。
何やら異変を感じた老人が小走りに犬のもとに近づいてみると、青い不透明なビニールで包まれた固まりがあった。
これほと犬が興奮しているのであるから、何か得体の知れないものが入っているのだろう。
爆弾かも知れない。
手をかけた途端爆発し両手を失うのでは、などと不安がりなから包みを開けた老人を襲ったのはすさまじい悪臭、異臭であった。
包みの中の物体の正体に気づくまでしばらくの時間があった。
二、三秒だったかも知れない、あるいは二、三分だったかも知れない。
老人は今、そのあたりの記憶は定かではない。
だが、ビニール包みの中の物体が人間の胴体であることに気づいた時の老人の驚きは、死ぬまで消え去ることはないであろう。
包みの中には臍のあたりで上下に分断された胴体が、トルソーを思わせるように入っていたのである。
一一〇番の急報で現場にかけつけた捜査員は、バラバラ殺人事件と断定し署に応援を求めた。
一〇分とたたずに、数台のパトカーが二〇人ほどの捜査員、刑事を乗せて到着、現場検証が開始され、周囲には立入禁止を示すロープが張られた。
平和な早朝の河川敷は、一転しておぞましい不吉な犯罪発生現場となってしまった。
切断された箇所、部位からして、他所に頭や両下肢等の未発見体があるはずである。
所轄のI署から県警本部に事件の発生、内容が報告され、他の切断死体の発見、捜索が江戸川流域の各署に命じられた。
その日のうちに、右腕一本を残して、他のすべてのバラバラにされた死体が発見された。
発見された場所はすべて江戸川流域であった。
このことから犯人は昨夜、切断した死体を何ヵ所かに捨て去ったものと推定された。
被害者は三〇歳前後の女性と断定された。
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