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▼ 殺意の原点【2】

殺意の原点【2】


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文=法野巌
イラスト=笹沼傑嗣

殺意の原点【2】

棄てられていた若い女性のバラバラ死体は、性器を抉り取られていた……。

●トルコ嬢

このバラバラ殺人事件が世間の耳目を集めたのは、そのバラバラ殺人という事件の残酷な性格もさることながら、バラバラに切断された腰部付近の胴体において、その陰部付近が鋭い刃物で抉り取られていたという事実にもあった。
つまり、その切断された胴体には、女性であれば当然備わっていなければならない外性器が見当たらなかったのである。
その傷跡からして、刃物によって切りおとされたのは明白であった。

そして、その後の必死の捜索にも拘らず、抉り取られた性器は発見されず、この猟奇的な事件の全貌が判明するためには、さらに一週間ほど後の、犯人村下竜夫の逮捕を待たなければならなかった。
捜査本部は連日二〇人ほどの捜査員を動員して、被害者の身許の割り出しに全力を注いだ。
身許が判明したのは、切断死体が発見されてから四日後のこと。
民間人からの通報によってであった。

被害者はどうも店で働いていたものらしいと捜査本部あてに電話があり、本部では早速通報者に署まで来でもらい、顔写真での確認等から、被害者は柳原育技、二十七歳、トルコ嬢と断定した。
通報者は川崎市内にあるトルコ風呂の支配人であった。
育枝はその店でトルコ嬢としてこの半年間ほど働いていたのだった。

何十軒とある川崎市内のトルコの中でも、育枝の働いていた店は高級トルコとして知られていた。
入浴料だけで二万円もするのでは、親のスネかじりの学生などが気軽に行けるようなところではなく、客種も、業者の接待を受ける取引先の部課長、不動産業者、金融業者などが主だったところであった。
被害者の身許が判明したことから、捜査本部には幾分安堵の色が流れた。
あとは交遊関係のあった者を洗えば良い、犯人が逮捕されるのは時間の問題だと、殆んどの捜査員は考えた。
早速、身許通報者であるトルコ風呂支配人の事情聴取が行なわれた。
その結果次のような事実が明らかとなった。


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