されど俺の日々【1】
されど俺の日々【1】
次々と凶悪な犯罪を繰り返す正太の犯罪者的性格は中学の頃から如実に現れていた。
●発端
さすがに昼間ほどの交通量は無いものの、夜になっても国道は長距離便のトラックなどが通り抜けて、相変わらず騒音が満ちあふれている。
交番の時計は十二時になろうとしている。
夜勤の立野巡査は出前してもらったラーメンを食べ終えたところであった。
ほっと一息つき、やれやれ、あと六時間で交替かと、両手を思い切り上に挙げて背伸びをしていたところへ、ただならぬ気配で駆け込んで来た青年があった。
「大変です、助けて下さい。みよちゃんが、みよちゃんが!」
青年は立野巡査にそれだけ言うと、両手を巡査の前にある机の上に置き体を震わせ始めた。
「おい、どうしたと言うのだ。落ち着きなさい、さっぱり話がわからん」
青年は明らかに何かに脅えている様子だった。
蒼白な、血の気を全く失った顔面、がたがたと音が聞こえても不思議はないほどの異常な体の震え、そして左腕の付け根のあたりが破れているTシャツ。
黙っていても立野巡査の目には、青年は異常そのものに見える。
「おい、どうした。ここは交番だ、安心して事情を説明しなさい」
巡査に促されて、青年はやや落ち着きを取り戻したらしく、口を開いた。
「実は、私のガールフレンドが強盗犯人に連れ去られたのです。車ごと持って行かれました。大変だ、彼女は殺されます。ああどうしたらいいんだ、畜生!」
立野巡査は、とてつも無い大事件の臭いを嗅ぎつけた。
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