殺意の原点【5】
殺意の原点【5】
棄てられていた若い女性のバラバラ死体は、性器を抉り取られていた……。
●私設秘書
竜夫は都内にある私立大学を七年間かかって卒業すると、政治家を目指して、本格的に政治家の秘書として修業を開始したのであった。
政治家の秘書には、圧倒的に将来政治家になるつもりでいる者が多い。
秘書という仕事は一生をかけてやる仕事ではなく、自分がいずれ立候補するまでの腰かけのようなものであると考えている。
竜夫も秘書生活を続けるうちに、次第に政治家の裏の世界に通暁するようになっていった。
彼が主として担当したものは資金づくりであった。
つまり金集めである。
日本の政治風土の中では、金の集め方が上手なものが派閥のリーダーとなるのである。
金のないものや、集金能力のないものは、いくら立派な意見を吐いても集団の長とはなれないのである。
竜夫は、後援会や脈のありそうな企業に足を運んでは政治献金を要求し、何がしかの金をつくるというような毎日を送っていた。
こうしてつくった金をそのままボスである議員に提供するような秘書はあまりいない。
大抵は一部を着服し、残りをボスに差し出ずのである。
もっとも彼らが必死に働いたおかげで金が入ってくるわけだから、彼らには一部の金品を私したからといって、着服したという意識なども毛頭無く、当然の報酬と考えている。
彼らは金をつくるためには相当ダーティなこともやるし、金融ブローカー、不動産ブローカーまがいのこともやる。
そうしてつくった金はすぐに酒や女へと消えて行ってしまう。
竜夫もこの世界に慣れ、次第に金も入ってくるようになると、例にもれず夜の遊びの方も派手になっていった。
以下は、検察官に対する村下竜夫の供述である。
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