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▼ されど俺の日々【6】

されど俺の日々【6】


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文=法野巌
イラスト=笹沼傑嗣

されど俺の日々【6】

次々と凶悪な犯罪を繰り返す正太の犯罪者的性格は中学の頃から如実に現れていた。

●傷害事件

もはや、故郷に帰ってもまともに相手になってくれる者は誰もいなかった。
ただ、さすがに母親だけは、正太を迎え入れてくれた。
母親には正太の他は近隣に親類縁者となる者はいなかった。
夫は正太がまだ三歳の頃、ぶらりと家を出たまま行方不明となった。
母親は、正太には父親のことは全く話さなかった。
従って父親がどうして母や自分を捨てて家を出たのかということを正太は知るすべもなかった。
敢えて、父親の話題を拒否する母親の態度に、彼女の夫に対する考え方、評価が表わされていた。

正太が非行少年、ひいては犯罪少年に成長した大きな理由に、この悲しい、孤独な家庭環境が指摘出来るであろう。
勿論、片親の家庭に育っても、健全な立派な成長をとげる子供も多数存在するが、一方非行に走る子供達もそれ以上に指摘出来るのである。
子供の健やかな成長に、両親の仲の良さは何よりの肥となる。
片親であったり、せっかく両親は揃っていても不仲であったりすると、子供は愛に対する飢餓状態に陥り、心の空白を埋めるために非行に走るという結末に至ることが多い。
勿論、そうでない子供も多数存在するのだから、非行化は、その子供の先天的な素因によるのか、それとも環境によるのかは簡単に白黒をつけられる問題でなかろうが、正太の場合には素質と環境とが同じ比率で作用したとしか考えられない。


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