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▼ されど俺の日々【7】

されど俺の日々【7】


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文=法野巌
イラスト=笹沼傑嗣

されど俺の日々【7】

次々と凶悪な犯罪を繰り返す正太の犯罪者的性格は中学の頃から如実に現れていた。

●窃盗事件

第三の犯罪は窃盗であった。
窃盗とは言っても、正太の犯した罪はとてつもないものであった。
約一年間で、二〇〇件ほどの窃盗を働いたのであった。
正太のやり口は、バー、キャバレー、喫茶店、スナック等に早朝ドアを破って押し入り、置き忘れてある現金、あるいはレジをこわし中に入っている現金を盗み出すというものであった。
犯行場所は東京を中心に、東は水戸、西は名古屋にも及んだ。
被害総額は判明しただけでも五〇〇万円にもなる。

正太は、傷害で服役した後、流石に故郷の町には住みづらくなったものと見て、一ヵ月ほど母親の所にいただけで東京に出て来ていた。
当初、喫茶店のボーイやキャバレーのボーイ等の仕事をしていたらしいが、やがて盗んだ金で生活をするようになり昼間は映画館やパチンコ、ゲームセンターで時間を潰し、夜になると活動を開始した。
適当な店を物色し、あたりをつけると近くのサウナや公園のベンチ等で明け方になるのを待ち、それから用意、持参してあるバールを携えて、犯行に及んだものである。

警察では、頻繁に提出される被害届を集計しているうちに、その手口が共通しているところから同一犯人と推定し、密かに内偵を進めた結果正太の存在が浮かびあがったものである。
正太はこの一連の窃盗事犯により、逮捕、起訴され、懲役四年を言い渡された。
窃盗の罪で、懲役四年という刑はかなり重い方である。
窃盗の罪の法定刑は最大限が懲役十年であるから四年という刑はそれほど重くはないのではないかと思われるかも知れないが、単なる窃盗だけで六年、七年といった刑を言い渡されることは殆んどない。
四年という刑はかなり重い方である。
それも、正太には前科があり今回で三度めの起訴であることなどが考慮されたのであろう。
服役を終え、自由の身になった時、正太は既に三十歳を超えようとしていた。
流石の正太も今度は懲りたように見受けられた。


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