されど俺の日々【8】
されど俺の日々【8】
次々と凶悪な犯罪を繰り返す正太の犯罪者的性格は中学の頃から如実に現れていた。
●窃盗事件
三度目の服役中、正太は美作次郎という囚人と仲良くなった。
次郎は手形パクリ屋、つまり詐欺罪を犯し実刑を言い渡され、服役しているところであった。
次郎に言わせると、詐欺こそが犯罪の王様であり、芸術品であるらしかった。
いかにして人を欺くか、又いかに簡単に人は欺かれるものであるかを次郎は正太に話して聞かせた。
正太はいかにも詐欺師らしい、次郎の絶妙な話し振りに感心はしたものの、俺にはやはり詐欺は向いていないなと結論を下した。
自由の身となり、何か仕事をしなければならない状況になった時、すぐ頭の中に浮かんだのは次郎のことであった。
詐欺には向いていないと自身に結論は出したものの、しかし、正太にとって次郎はどうやら唯一の友であった。
――次郎の所へでも行ってみるか――
確か次郎は正太よりも一ヵ月ほど早く出所しているはすである。
暇があったら訪ねて来いと、東京の住所を教えてくれていた。
――訪ねてみるか――
正太は四年ぶりに東京に向かった。
次郎の家は中目黒の駅近くのマンションの一室であった。
ドアをノックすると、聞き覚えのある声が、「おう、誰だ」と応じてきた。
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