されど俺の日々【9】
されど俺の日々【9】
次々と凶悪な犯罪を繰り返す正太の犯罪者的性格は中学の頃から如実に現れていた。
●窃盗事件
「俺だ、貞野だ。ムショでは世話になったな。元気か?」
「おう、正太か。まあ入ってこい。よく来たな」
刑務所での友人は、いわば戦友みたいなものである。
次郎は正太の来訪をうれしがっているようだった。
もともと次郎は人の扱い方が上手であった。
人の気を逸らすということが無かった。
このあたりが次郎を詐欺師にさせた大きな理由であろう。
勿論、人を欺くことに異常な快感を覚えることも必要不可欠の要件ではあるが。
次郎が正太の来訪を心から喜こんでくれているのか、それともそのように見せているのかは正太にとってはどうでもいいことであった。
その晩遅く、女の来訪者があった。
どうやら次郎の愛人のようであった。
「あら誰か来ているの?」
「ああ、俺の友達で貞野というやつだ」
という声が隣室から正太の耳に届いてきた。
それから二十分もたたないうちに、男と女の荒い息づかいが正太の耳朶を叩いた。
息づかいは次第に大きくなり、時々、ぬかるみに足を入れた時のように湿った摩擦音が混じり、やがて絹を裂くような女の絶頂を告げる声が途切れ途切れに聞こえ、そして静かになった。
正太は自涜をした。
その晩、夢の中にまで女の裸は侵入して来た。
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