闇の中の魑魅魍魎【6】
闇の中の魑魅魍魎【6】
身を挺して子供を守るべき両親は意外な行動をとった。
●序曲
S組の重要な資金源の一つに、金融業があった。
勿論高利貸しである。
S組の営んでいる貸付けは極端な高利であった。
十日に一割というような場合もあった。
十日に一割というと単純に計算しただけでも一月に三割、一年間で三十六割、つまり十万円を借りると一年間で三十六万円の利息を支払わねばならない。
完全に出資法違反の違法貸付けであった。
利息を規制する法律として主なものには、利息制限法と、出資法の二つがある。
なぜ、このような高利金融が跋恩しているのであろうか。
その理由は、利息制限法に違反した利率で貸付けをしても、それを規制する罰則規定がないからである。
その上、違法高額な利息であってもいったん受領すれば、受領自体正当とされるからである。
当事者が任意で支払っているのだから、見逃がしておこうというのである。
S組関係の金融における十日で一割という利息は完全に出資法違反である。
借主か警察に駆け込めば、業者は即座に逮捕されたはずである。
しかし、借主としてそうはさせなかったところが暴力団たる所以であった。
警察に訴え出たところで、S組すべてを逮捕してくれるわけではない。
直接の貸付け担当者あるいはその上司くらいのものであろう。
二、三人を逮捕して、それですべてが解決するわけではない。
だから、S組が途方もない高金利で貸付けをしていることを感付いていても、警察としても手の下しようがたかったのである。
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