闇の中の魑魅魍魎【8】
闇の中の魑魅魍魎【8】
身を挺して子供を守るべき両親は意外な行動をとった。
●家庭の崩壊
それが誠子にとってはかえって不気味であった。
男が家を訪ねて来て、顔を見合わせた時は、誠子は急いで二階に上がっていったが、その時に、自分を見つめる視線の中に蛇を思わせる冷酷な炎が燃えているのが見えたように思えた。
後日、誠子の予感は、正しかったことが判明するのであるが。
男が家にやって来てから一カ月くらい過ぎた頃、誠子は、夕食の後、両親が低い声で、何やら深刻な話をしているのを耳に入れた。
どうやら、誠子ら家族の住む建物と、土地が担保として男にとられたらしかった。
大人の世界のことは、まだ誠子には良く理解出来なかったが、幼い頃から住み慣れた家が金貸しのものになってしまったのかと思うと、さすがに誠子はショックを受けた。
日頃から夫の顔色をうかがい、おどおどとしている母は、このような非常時になってもあいかわらず虚ろな目を泳がせているだけだった。
父親はアルコールには目のない方であった他、土地家屋を金貸しにとられてからはますます酒量が増え、昼間から一升びんを空けるような状態となった。
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