サタデー・ナイト・レイパー 第1回
サタデー・ナイト・レイパー 第1回
性の快楽だけを求める男子高校生とその兄の犯した罪。
●夜の御指名
大沢田拳二は、実刑を告げる裁判長の声が一瞬、遠い遠い、銀河の彼方、自分とは全くつながりの無い世界において演じられている芝居の中で、裁判長の役を演じている俳優の発する声だと感じた。
それは、拳二が予想していた中でも、最悪の事態の到来を告げるものだった。
懲役二年。
執行猶予無し。
裁判長が拳二を見つめて、
「他の被告人らは皆いまだ少年であり、被告人・大沢田拳二のみが成人であり、本件においては大沢田が主導的立場にあり、他の被告人らは、大沢田の命ずるままに行動したものであり、現在、自らの犯した罪を深く反省していることを考慮すれば、大沢田を除く被告人らに対しては執行猶予とすることとし、被告人・大沢田に対しては、主文のとおり懲役二年とする」
と一息に言った時、拳二は、ようやく自分がとんでも無い状況に陥ってしまったことを悟った。
美空麻子は、春休みを間近に控えた土曜日の午後、クラスメートの大沢田英気から電話を受け、やはり友人の淡谷珠子を誘って、一緒に英気の家に遊びに行くことに決めた。
別段今夜の予定は無かったし、両親は何とかパックという温泉旅行に昨日から出かけており、少々夜遅くまで遊んでいたところで、弟の博見など文句を言うはずも無かった。
それに何よりも英気には少なからぬ好感を持っていたのだ。
珠子は麻子のクラスメートだった。
私立××商業高校二年B組。
それが、麻子、珠子、英気の所属する学校、クラスだった。
麻子は、かねてから声をかけて欲しいと思っていた当の英気から誘いを受けて、多少の息苦しさを伴う快い興奮状熊で珠子に電話をした。
二、三回コールが鳴った後、珠子本人の声が受話器から響いてきた。
「はい、淡谷ですが」
「ねえ珠子でしょ。私よ、麻子よ」
「あり麻っぺか。何よ。どうしたのよ。どうせ遊びの誘いでしょ。ふふっ」
「ねえねえ、聞いてよ、英気君からさあ、今日は誰も居ないから遊びに来ないかってさ」
「誰も居ないからってどういう意味。ひょっとしてあれかなあ」
「馬鹿ね。決まってるじゃない」
「そうねえ。ふふふっ。でもだったら私一人誘ってくれれば良いのにねえ。ねえ、珠子も一緒にだってさ」
「あら私にも御指名」
「そうよ。ねえどうする。行こうよ。どうせ今日は暇なんでしょう?」
「でも、遅くなるんでしょう?」
「あら遅くなりそうだったらバイバイして帰ってきちゃえばいいわよ。ねえ、行こうよ」
「そうねえ、いいわ。じゃあ私の家に来てよ。一緒に行こう。彼の家知ってるの」
「知らないのよ。電話で聞いてみるわ。だって、私一人じゃ嫌だと思ってまだ聞いていなかったの。それじゃ三〇分位で行くわね。バイバイ」
「バイバイ」
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