色魔の勲章 第4回【2】
色魔の勲章 第4回【2】
養子として虐げられた幼年期を過ごした男に宿った性への渇望。
●事件の顛末
「ねえ、今度のお店の休みの日に、少し僕につきあってくれませんか。実は是非ともあなたにお見せしたいものがあるんです」
「まあ、何かしら」
微かに頬を染めて、それでも蔵子は、いいわよと承諾をしてくれた。
まだ世間ずれをしていない蔵子は、自分に積極的に好意を示してくれる安高に、同様に好意を抱き始めていたのである。
それに安高は、一見は弱々しく、何となく物哀しい雰囲気を漂わせているところがあり、蔵子は一種の同族意識のような安心感をも覚えていたのである。
さて、いよいよ喫茶店の休みの日がやってきた。
安高は、指定しておいた駅前近くの喫茶店で蔵子と待ち会わせ、一時間ほど自分の好きなスターや歌手の話などをしたのち、いよいよ蔵子籠絡の準備に着手した。
安高は蔵子が絵が好きなことを聞き出していた。
「ねえ、僕のアパートに棟方志向の版画があるんだ。何でも彼の作品の中でも初期の傑作らしいんだ。僕は全くこんなものには無知だから、是非君に見てもらいたいな」
安高の言葉をすっかり信用してしまった蔵子は、彼の六畳一間のアパートへと足を向け、促されるまま彼の部屋の中に入ってしまった。
「ねえ、どこにあるの」
と安高に声をかけようとしたその時、安高は蔵子を両腕で抱き締めて、あっという間に彼女の唇に自分のそれを重ね合わせてしまった。
あまりの突然の出来ごとに呆然自失となっている蔵子を布団の上に押し倒し、ジーパンの上から、彼女の股の部分に右の手を差し入れ、布地の上とはいえ初めての彼女の秘めやかな部分の感触を得た。
やっと事の成り行きを理解した蔵子は、
「いや、いや」
と首を振り、足をバタつかせ必死の抵抗を見せた。
が、女の体の扱いに慣れている安高は、まず彼女の両頬を平手で思い切り殴って静かにさせ、耳許に口を寄せて、
「好きだよ、好きなんだ」
と何度も繰り返し、それでも手足を動かして抵抗の姿勢を示すと、
「服が破けてしまうけれどそれでもいいかい?」
と、巧妙な脅しをかけ、遂には彼女が身にまとっていたものすべてを剥ぎ取ってしまった。
六畳一間の安アパートの、長いこと敷いたままの汚ない布団の上に、安高が夢にまで見た蔵子の高貴な全裸の肉体が横たわっていた。
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