ハングリー国家 日本の悲劇【4】
ハングリー国家 日本の悲劇【4】
強姦未遂事件を起こした少年には母親との不倫の関係があった。
●事件の背景に迫る
山崎調査官は、まず神保巨自身にあってみようと考えた。
彼は、これから一ヵ月ほどの間に、事件の背景を調べあげ、神保の家庭環境、将来における彼の行動予測等を裁判官に報告しなければならない。
この調査官の報告をもとに、裁判官は神保巨に対し、不処分にするか、保護処分にするか、あるいは、起訴して刑罰を受けさせるのが適当として検察官に逆送するかを決定するのである。
家庭裁判所には調査官という、大学において心理学などを専攻し、裁判所の試験をパスしてきた、人間関係調査の専門家がいる。
この調査官達は、少年事件などにおいて、家庭の環境、本人の性格、資質、性格の歪み、矯正の可能性、将来性等を調査、実験し、裁判官が最終判断を下すための資料収集に従事する。
山崎調査官は数十倍の難関をくぐり抜けてきた、この道一〇年の優秀な人物だった。
仕事にも油が乗り、その調査結果は絶大な信頼を受けていた。
同じ仕事を同じ期間やっていても、すべて同一水準に到達するとは限らない。
山崎調査官は、調査をする際、ありとあらゆる場合を想定し、自分の主観のみに頼ることは極力避けるように努力してきた。
自分の心の中に予断が、あるいは偏見がしみ付いていると、判断が曇らされる。
その恐ろしさを彼は良く知っていた。
調査官は、神保に会ってみようと考えたが、その前に、彼の通っている高校の担任教師に会い、一応の予備知識を得ておこうと考えた。
巨は、都内でも有名な私立高校に通っていた。
担任の教師に会ったのは、夕方の五時近かった。
日は既に暮れていた。
調査官は、担任の教師に身分を明かし、神保巨のことで尋ねたいことがある旨申し入れた。
担任は、最初は驚いた様子であったが、調査官より事情の説明を受け、納得し、快く応じてくれた。
教師の話から、山崎調査官は、巨は、入学時にはトップに近い成績であったが、高校一年の夏休み過ぎから急に成績が振るわなくなったこと、もともと大人しい性格であったが、やはり、夏休みを境に、更に消極的な、否それ以上に、人目を避けるような行動をとるようになったこと、家庭環境としては、母親と二人で生活しており、両親は、巨が中学一年の時に離婚していること、母親は、どうやら水商売をしているらしいことなどがわかった。
以上の話から、巨が高校一年の時の夏休みに何かが起こったように思われる。
それがどんなことかはわからないが、何か重要なもののように思えた。
その足で調査官は巨の家に向かった。
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