ベージュ色の襞の欲望 第5回【1】
ベージュ色の襞の欲望 第5回【1】
成男は些細な事で激情し、冷酷非情の行動をとった。
●姦淫行為
15年の刑期を2年ほど残して彼は出所した。いわゆる仮出獄というものである。
残虐な犯行により収檻されていた成男も、厳しい監視体制の下にあっては、その異常な性格の爆発も流石に抑圧されていたのであろう。目立つ違反行為もないままに13年間が経過したのであった。これは、彼の犯した罪を考えれば信じられないことであるが、しかし、自分よりも弱いものを苛めることに喜びを感じる彼の性格からすれば、自分よりも弱そうな人間の見当たらない刑務所では腕の発揮のしようも無かったのだろう。
釈放された彼の住みついたところは山谷のドヤ街であった。
この街で彼は日雇い仕事をして金が入ると焼酎を飲み、無くなると又、街頭に立ち手配師の与える仕事をするという毎日を送っていた。
××警察署管内の交番に男が真っ青になって駈け込んで来たのは朝の8時頃であった。
「私の女房が殺されてます。すぐ来て下さい」
男は興奮のあまり息をとぎらせ、これだけ警官に告げるのがやっとのようであった。男の話を聞いた若い警官は殺人事件ということで男と一緒に現場に走って行った。
「ここです。この店の中です」
男が指をさしたのは、交番から100メートルほど離れた旅館や飲み屋などの密集する小便の臭いのたち込めた歓楽街の一画で、赤提燈の下がった飲み屋であった。
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