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▼ ベージュ色の襞の欲望 第5回【2】

ベージュ色の襞の欲望 第5回【2】


文=法野巌
イラスト=笹沼傑嗣

ベージュ色の襞の欲望 第5回【2】

成男は些細な事で激情し、冷酷非情の行動をとった。

●姦淫行為

警官が店の中に入りまず目にしたのは、下着を何一つ身につけていない女の下半身だった。女の目は開かれたまま虚空を睨んでいた。喉には明らかに絞められた跡があった。男は、女の夫だと言った。女は飲み屋の女主人であり、一人で働いている。いつも夕方五時頃に家を出かけて、夜は午前1時頃戻ってくる。その日は、2時、3時になっても帰って来なかったので、不審に思い店まで足を運んだ。そして、殺されている妻を発見したのだった。

年は45歳。

早速現場検証が行なわれた。

そして事件は他殺、つまり殺人事件と断定された。

又、司法解剖の結果、胃内容物から殺された時間は午後12時から翌朝午前2時頃にかけてとされた。死体の陰阜、大腿内側部には、精液が付着していることも判明した。陰毛に付着した精液は乾燥していたが、酸性フォスファターゼ試験によりその存在が認められた。

姦淫行為、あるいは類似行為があったのは明らかであった。ただ、それが殺人者によるものなのか、又、事前なのか、死後に行なわれたものなのかはこの段階で明らかにするのは無理であった。

この飲み屋のおかみ殺人事件は、その後の調べでも目撃者も、又、2人の争っている場面の物音を聞いた人も見つからず、犯人の像を浮きぼりにすることは全く不可能であり、事件が発生してから3カ月も経過した頃には、捜査本部には、このまま迷宮入りになるのではないかとの不安が生じてきていた。

キャバレーホステス殺人事件が発生したのは丁度、この頃であった。

通報者は浅草の吉原近くにある連れ込み旅館の従貰員であった。

昨夜、男と一緒に泊った女性が刃物で体を切り則まれ、殺されているというのである。

知らせを受けた浅草警察署の係官が現場に急行した。事件慣れしているはずの捜査員もこの現場を見た時には思わず足が震えたという。


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