ベージュ色の襞の欲望 第6回【2】
ベージュ色の襞の欲望 第6回【2】
成男は些細な事で激情し、冷酷非情の行動をとった。
●逮捕
まず、事件当日のアリバイの有無である。アリバイが成立したものが7人あった。残るのは3人である。この3人については、すべて所在が不明なため、アリバイを調べようにも調べられないのである。
捜査員は女の勤めていたキャバレーに行って、残る3人の顔写真を同僚ホステスに示し、事件の夜、この3人の中に店に来たものがいるかどうかを確認した。その結果、被害者と一緒に席についたホステスが、箱崎成男を、どうもこの人に似ていたような人が来たと思うとの供述をした。ただ、彼女は断定することはしなかった。
それも無理はないことである。一般に水商売の世界に働くものは、客の顔をよく覚えているものであり、なかには、半年ほど前に1回だけ見た客の顔を覚えているというようなこともある。
だが、被害者の働いていたキャバレーは、いわゆるピンクキャバレーであり、店内は相当に暗くしてあり、その明るさの下で見た顔をはっきりさせろといっても酷な注文である。捜査本部は残り3人の行方の追及に全力をあげた。ほぼこの3人に対象を絞ったようであった。
成男を除いた2人の重要参考人はその後、警察の必死の捜査により、所在が判明し、アリバイも立証された。残るのは成男1人であった。
だが、成男の行方はその後もつかむことが出来なかった。
半年が経過した。依然成男の手がかりはつかめなかった。
捜査本部にようやく焦燥の色が浮かんできた。
2度めの事件と同様の事件が発生したのである。しかも発生した場所は都内であった。
その手口は、キャバレーホステス殺しの場合と同じであった。違うのは今回は、被害者は殺害を免れたことであった。腹部刺創により重傷を負った被害者の回復を待って事情聴取か開始された。
成男の写真を見せられた被害者は一目見て犯人である旨断定した。これでほぼ前回のキャバレーホステス、今回のキャバレーホステス事件の犯人は成男であることが裏付けられた。
合同捜査本部は成男を全国に指名手配した。逮捕されたのはそれから1週間後、名古屋の簡易旅館に泊っているところであった。
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