不定期連載 "抱き枕系"コラム! すあまにあ倶楽部 第5回 すあま、名古屋へ行く 文=抱枕すあま |
名古屋は、私が生まれ育った場所です。SMという存在を知ったのも、この街でした。中学生の時、近所にあった小さな古本屋さんでSM雑誌を見つけてから、SMの虜になったのです。それからは、お小遣いを貰うとすぐに、古本屋さんへ駆けだしたものです。
この古本屋さんは、優しそうなお婆さんが一人で店番をしていたので、中学生でもSM雑誌を買いやすかったのです。でも、中学生の小遣いですから、買えたのはモノクロームのグラビアしかない、SM小説がメインの雑誌ばかりでした。おそらく、『小説SMセレクト』とか『小説SMファン』だったかと思います。そのせいなのか、未だに私はグラビアよりも、官能小説が好きだったりします。
↑名古屋の数少ない観光スポットであるテレビ塔。展望台まで登っても、特に何もない。蝋人形館もなければ、コンドームに似たマスコットキャラもいない。
そんな私の故郷である名古屋で一番の繁華街といえば、テレビ塔のある栄です。この街には、冴場麗さんが代表を務める『BDSM FETISH BAR R』というお店があります。私は社会人になってから、ずっと東京で暮らしているため、故郷である名古屋のSM文化について、ほとんど知りません。そのため、名古屋のSM情報を知るべく、『R』のメルマガを取っていたのです。すると、最新号のメルマガに、気になる情報が載っていました。
恒例2ヶ月に1度のスレイヴオークション♪は、今回もレディースデイの金曜日に開催★ スレイブ(奴隷)Mの性癖としてオークションにかけられる経験をしたい方、Sとして落札!したい方のエントリー募集中。 参加希望は店頭STAFFまで。お電話・メールのみでの受付は出来ません。 たとえば……「30円でビンタ3発」「100円で顔面騎乗」なんてのもOKです(笑)。 当日参加も大歓迎ですのでお気軽にご参加下さいね♪ |
スレイヴオークションって、一体どんなことをするのだろう? う〜む、気になる。私はボストンバックを手に取ると、近くに落ちていたエスパー伊東だけを詰め込んで、名古屋へと旅立ったのです。名古屋駅から地下鉄東山線に乗り換え、2駅目の栄駅で降りて東へ5分ほど歩いたところに、目的の『R』はありました。
↑『R』へお越しの際は、『メンバーズみち子』と『メンバーズゆういん』を目印にすると、余計に分かりにくくなります。
『R』の入口のドアを開けると、バーカウンターが2つ並んでいました。21時頃に着いたのですが、もう既にカウンターの席は8割ほど埋まっていました。さらに、この日はレディースデイということもあり、女性のお客さんの割合も高めです。どうやら、スレイヴオークションは、かなり盛り上がるイベントのようです。期待に胸が高鳴ります。
空いていたカウンターの席に座ると、カードへの記入を求められました。東京のSM業界では、「知らない人は知らない」、「知っていても関わりたくない」といわれるほど有名なこの私ですが、名古屋ではまだまだ無名でした。しかたなくカードに名前などを記入していると、項目の中に性癖の欄がありました。私は迷わず『抱き枕系』と記入しました。
他のSMバーでも、このようなカードへの記入をよく求められるのですが、このように書くと、決まって「抱き枕系ってなんですか?」と聞かれます。しかし、抱き枕系の性癖を簡単に答えるのは、もの凄く難しいことなのです。
普通の枕にセーラー服を着せて、縄で縛ったり、鞭打ちしたり……。
だけど、徐々に愛が芽生えていって……。
今は、結婚を前提としたお付き合いをしていて……。
こんな説明で、誰が私の性癖を理解できるというのでしょうか? 私だって、自分自身の性癖が理解できないのですから。なので、いつも説明が億劫になってしまい、まともな説明もせず、お茶を濁してしまうのです。まぁ、抱き枕系の性癖について、事細かに6時間くらい説明したとしても、それはそれで相手は困ると思うのですが。
そんな訳で、せっかく『R』の椿さんが聞いてくれたのに、私は徐々に無口になってしまいました。ごめんなさい、ごめんなさい……。
私は人見知りが激しいので、すぐに心に壁を作ってしまうのです。初めて合う女性と話すのは、最も苦手とするところです。しかも、それが美しい女性だとしたら、なおさらです。それに、私の心の壁は、ヤンキー兄ちゃんに落書きされたり、ネコ除けのペットボトルを置かれたり、ヨッパライに立ち小便されたりして汚れているため、心の壁さえも隠してしまおうとするのです。
こんな人見知りの私ですが、年に1〜2度、妙にハイテンションになることがあります。こんな時は、初めて合った女性に、自分から声をかけてしまったりするのです。以前、ある縄師の方のバーへ行ったとき、近年まれに見るハイテンション状態でした。焼酎9にウーロン茶1という割合の異常に濃いウーロンハイを飲んでいたためかもしれません。
いつもの仲間と楽しく飲みながら騒いでいると、隣の席に座っていた女性が、時計を気にしながら、縄師さんを潤んだ瞳で見つめているではありませんか。どうやら、縄師さんに縛ってもらいに来たのに、この縄師さんが別のお客さんと話し込んでいたため、なかなか縛りをお願いするチャンスがなかったようなのです。こんな時、ハイテンションな私が黙っている訳ありません。さらに悪いことに、私の頭の中に住んでいる、最強のお節介オバさんキャラが姿を現したのです。
す「○○さんに縛って欲しいのでしょ?」
女「えっ!? で、でも、いいんです……。○○さん、お忙しそうだし……」
す「だけど、もうすぐ終電ですよ。せっかく来たのだから、縛ってもらえば?」
女「い、いえ、いいんです……。ほ、本当にもう、いいんです……。そ、そんなつもりで来たんじゃないのですから……」
す「だって、さっきから時計を気にしているけど、もうすぐ終電でしょ? 早く縛ってもらわないと、帰れなくなりますよ」
女「い、いえ、ほ、本当にそんなつもりで来たのではないのですから……。べ、別に、し、縛ってもらわなくても……」
す「そんな、遠慮せずに! すみません、○○さん!! 彼女を縛ってあげてくれませんか? もうすぐ、終電なんだそうですよ!!」
女「あっ、そんな……。は、恥ずかしい……。だ、だけど、お、お願いします……」
そういうと、その女性は着ていた服を脱ぎ始め、下着姿になりました。その下着は、真っ赤でとってもSEXYなものでした。私は思わずこう叫んでしまいました。
す「お前は上島竜兵か!!」
翌日、酔いが覚めてから、暴言を吐いてしまったと反省しました。初めて会った女性に対して、大変失礼なことを言ってしまったと。でも、どう考えても、この女性は縛られる気満々だったのだもの。プールサイドに立って、「押すなっ!」と言っているようなものでしょ?
さてさて、話を元に戻して、今回名古屋に来た最大の目的であるスレイヴオークションなのですが……。実は、オークションが始まる前に、帰ってきてしまいました……。だ、だって、すでに22時半を過ぎていたのですよ!! 良い子は、もう寝る時間ですよ!! それに、これから実家に帰るというのに、あまり遅く帰ったら、ママに怒られちゃうのだもの。いま履いているガラスの靴だって、0時を過ぎるとカボチャの靴に変わってしまうのですから。
そんな訳で、スレイヴオークションに興味のある方は、名古屋の『R』まで実際に足を運んでみて下さい。2ヶ月に1度の開催だそうです。そして、どんなイベントだったかを、是非とも私に教えて下さいね!!
そうそう、実家に帰ってママと話をしていたとき、衝撃の事実が判明しました。私が中学生の頃、よく通っていたあの古本屋のお婆さんと私のママは、昔からの友達だったそうなのです。そういえば昔、中学校の制服を着て、名札を付けた状態でSM雑誌を買いに行ったことがありました……。しかも、私の名字は非常に珍しいので、どう考えてもどこの子だかバレてたはずなのです……。あうあう……。
関連リンク
BDSM FETISH BAR R公式サイト=smbar -R-
抱枕すあま 『SM探偵団』(ガッツ)で男優兼監督としてデビュー。その後、カメラマン、照明を経てスタッフその3となる。着実に一歩ずつ大物監督へのステップを踏み外している。最近では、『SM魔女狩り審問会』(エピキュリアン)において、金属製拘束具のデザインおよび製作を担当した。抱き枕との生活を綴ったブログ『すあま日記帳』もある。 |
07.07.29更新 |
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