2011.05.05.Thu.at Tokyo Big Sight.
有明・東京ビッグサイト東1・2ホール
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プロ・アマを問わないマンガ作家・イラストレーターたちが、自主出版した本・作品を発表・販売する展示即売会=コミティア。そこは作家たちが自分の個性を自由に発揮できる場であり、訪問者にとっては未知の表現に出会えるかも知れない宝の島――。 去る5月5日に開催された「COMITIA96」の収穫物を、エヴァンゲリオン研究家の四日市氏、コミティアファンの伊丹直行氏に紹介してもらいます!!
ゴールデンウィークも佳境の5月5日はこどもの日、日本最大規模の創作同人誌即売会「コミティア」が96回目の開催を迎えた。ご存知の方も多いだろうが「コミティア」は漫画から小説、育児日記に旅日記、画集に一発ギャグに出オチにと「オリジナル」であればなんでもありの同人誌即売会である。最近は「同人誌」という括りも超えて自主制作音楽ディスク、自主制作アニメDVDまで幅の広がりまくっている自主制作の祭典である。ゴールデンウィークの真っ只中の熱狂から、ほんのすこしだけおすそ分け。いや、むしろ自慢に近い気持ちで購入物を紹介したい。(四日市)
□書名=Pill of a HILLS BRAIN
□作者=POSTPOSSE NR
□サークル名=FUNCTION'INC IN JAPAN 展示のスペースで発見したかなりキレてる画集。少女をモチーフにしているが、埋め尽くされるようなコラージュとペイントによってサイケデリックとポップを接続しながら越境している。サイトを見る限りコミックよりもクラブカルチャーの近くで活動されているようだが、よくわからない。世の中にはまだまだ知らないグッド・ジンが溢れている、と個人的にディグ欲を新たにするきっかけにもなった。なんとなくチボ・マットや、Crue-L、ボアな感覚、U.G.MAN、COPASS GRINDERZの心意気を連想した。(四日市)
□書名=近擬似恋愛
□作者=miya
□サークル名=f2+ 出てくるキャラクターが全員同性が好き、という清々しい設定のBL。設定は清々しいのですが主人公の堀君は報われなさすぎるし、同級生のマイケルは女装コスをするオタクだし、と一筋縄ではいかないところが愉しいです。何より絵が可愛いので、気になった方はジャンルを気にせず是非。(伊丹直行)
□書名=ニクノマワル
□作者=壁の彩度
□サークル名=壁の彩度 ハードボイルドとエロとグロと神道とジャパニーズ・ノスタルジーをごっちゃ混ぜにした若者のUターン・ヒストリー。イラストレーターTNSK氏のオリジナルキャラクター「高木さん」のエロ有りグロ有りエロ有りエロ有りエロ有りエロ有りエロ有りエロ有りのハートフル漫画。エロ有り。 (四日市)
□書名=五十年目の冬の日
□作者=藤井あさ
□サークル名=白米 人を凍らせることに飽きてしまった雪女さんのお話。話相手になってしまった青年の好青年ぶりもいいんですが、会話で墓穴をがんがん掘っていく雪女さんがテレて(デレて)いくさまが可愛いです。白米の漫画は、この本に限らず毎回すごくテンポがよくてどんどん読ませるところがすごいです。 (伊丹直行)
□書名=ざつおん!!!
□作者=HTC*
□サークル名=HTC COMMUNICATIONS 某女子高生バンドサークルアニメのパロディだが、コンセプトをパロっているだけなので創作でオッケー。クラブカルチャーからの影響をオタクカルチャーにキッチリ包み込んだむっちりした絵柄のバンド漫画。ただし軽音楽ではなくノイズ。すでに何作か出ているが、今回は次作の準備号。作中にもTALKING HEADSやコーネリアスなどが登場する。UStreamも登場する一方で、今は数少なくなった新宿だののビルの一室に隠れ潜む系のレコード屋も登場、音楽愛好者には思うところありまくりの Girls Make Some Noise Comic !!(四日市)
□書名=KOINOYAMAI
□作者=井ノ上ふき
□サークル名=いののお店 恋の病が具現化されてしまった世界の、少年の恋の話。井ノ上さんのやさしい絵柄で描かれるフワフワした病が、田畑君(主人公)には申し訳ないけれど大変可愛らしい。表情もちくいち可愛くてこちらまで胸キュンになります。可愛いです。(伊丹直行)
□書名=world fabrication
□作者=mot
□サークル名=anticycle どことなくウエダハジメテイストを感じて手にとった、講談社BOX文庫のカバーイラストなどなど商業でも活躍されているイラストレーターさんのサークル。「セカイ系ちゃんマジセカイ」「井戸の底ガール」の2本の漫画が収録されている。希望とラブコメに諦観を少々まぶした作風が好みでした。漫画家・西島大介のフリーペーパー「Dien Bien Phu Press Vol.6.5」も委託されていたのでゲット。(四日市)
□書名=空だって飛べるのに
□作者=原田尚
□サークル名=素路 超能力を持った男の子が、世界を救ったりせずにオナニーしたり恋をしたりするお話。ここに出てくる舞ちゃんが本当にいいんですよ! ツンデレと言うには非常にいいツンデレで、これじゃあ人生賭けちゃうな、という感じの。オチも突き放したように見えて優しくて、いい漫画です。(伊丹直行)
□書名=いざ鎌倉
□作者=natant, 769
□サークル名=nanatant ネットレーベル「Maltine Records」で活躍しているアーティスト「パジャマパーティズ」のメンバーと、我らがWEBスナイパーでもおなじみの769さんによる鎌倉の喫茶店ラブ本。レトロ印刷特殊装丁、全ページ多色印刷の凝りに凝った一冊。内容はもちろん喫茶店のレビュー、写真とJKのイラストをあわせたアートワークに小説にと盛りだくさんの一冊。「こ寿々」という喫茶店に添えられた三つ編みJKが一番かわいい。告白と玉砕は俺にまかせろ。(四日市)
□書名=「軌道ラウンジ Vol.4」「よめこ本3」
□作者=コイワイソウイチ
□サークル名=軌道ラウンジ □書名=「ソマリアのぱすた00」
□作者=ボルタネクスト5、なほるる
□サークル名=ボルケーノ帯 勝手にコミティアニュージェネレーションと分類しているSNS以降アート系多人数サークルの中でも熱紙に続くミニコミ感を搭載しながらインディーズ魂全開な軌道ラウンジの新刊3種。軌道ラウンジVol.4はイラストレーターのお宅訪問をイラストや文章や写真で紹介。震災後の実感を伴った漫画もアリでボリューム感十二分。よめこ本は軌道ラウンジの推し続けている目が四つある女の子のシリーズで、今回はコラージュを使った実写(!)よめこも有り。委託の「ソマリアのぱすた00」は女の子のらくがきノートの香りをクンカクンカできる漫画とイラストのコピー本。頒布物にとどまらない、活動全体が楽しみなサークル。(四日市)
□書名=人魚禁猟区
□作者=九井諒子
□サークル名=西には竜がいた 以前サイトで公開されていた「人魚姫」という短編の続き……ではなく、全く新しい、でも人魚と人間が共存している街とその少年のお話。人魚というファンタジーの世界のものが、この現実に居たらどうなるか、非常なリアルさと優しさをもって描かれているのだけど、最終的に自らの傲慢さまで見透かされてしまうような、圧巻の1冊です。(伊丹直行)
□書名=ファミレスの住人
□作者=水あさと
□サークル名=ミルメークオレンジ 「僕は心から、女の子の泣き顔が好きなんだ」なあなたは「大好きだ!」と叫びながらマストチェックな水あさと。たまに品性下劣。うん、よし、どちらもよし。今回の新刊は心が痛むファミレス貧乏ハックをメインに据えたハートフル・ラブコメで泣き顔もバッチリ、うん、よし、俺によし、お前によし。(四日市)
□書名=アオの庭の、
□作者=成松幸世
□サークル名=みそ煮 トルコ(?)に渡った日本人青年の恋物語かと思いきや「朝にうまれて夜に立ちあがるようなもの」が絡んできて、まるで神話のような展開を見せる、不思議な手触りの話です。読んでいて脳の使っていない部分をフル回転さられるような、すごい漫画。(伊丹直行)
□書名=ふきんしんまんが.
□作者=高野雀
□サークル名=chapter-22 タイトルの指す不謹慎とは、もちろん2011年3月11日に起きた東日本大震災を扱った漫画であることから。震災後の、ある実感のひとつを漫画にしたコピー本。フラットな世界の終わりをさらっと仕上げる手つき。震災後の心情を描いた作品はまだ少なかった印象です。貴重な一冊。(四日市)
□書名=同じ人
□作者=位置原光Z
□サークル名=大作戦 ジャンル、概念、定形パロディに定評のある作家、位置原光Z氏の新作。オナホール、腹パン、エロをほのぼのシュールなギャグにする作風は他に類を見ない。四コマ、短編漫画が織り交ぜられ、クスッと笑うも昨今のネットジャーゴンや空気を見事に転倒させてクスッと笑う、そんな本。何度も紹介しているし、鉄板だからもうみんな買いなさいよ。間違いない。(四日市)
□書名=タグレッツ
□作者=関根美有
□サークル名=エベレストライブラリ 雪国から上京してきた青年と、そのうっかりした恋のお話。恋と蕎麦屋と雪国出身、が合わさってやさしい結末にもっていかれるあたりが関根マジックです。青年が恋をする「隅子」が、いきなりすごいビジュアルなのですが、読んでいくうちに可愛く見えてくるあたりも素敵です。(伊丹直行)
□書名=練馬大戦
□作者=三郎、jeli
□サークル名=クラン練馬 あまり練馬は関係がないイラスト集。厚塗りや、ポリゴンっぽく角張った、作風とモチーフともにゲームグラフィックから影響を感じるイラストがてんこ盛りのコピー本。デジタル世代のイラスト技術と想像力の一端が感じられる。本は軽いが、重たい一冊。 (四日市)
□書名=COMICロケットvol.2
□サークル名=COMICロケット編纂委員会 関根さんが表紙を書いてる!ということで購入したコミックロケット。買ってみて、お勧めしたい作家さんが沢山載っていることに気付きました。いまい漫画株式会社・アニュウリズム・山本美希……山坂書房までがっつり網羅されていて、読み終わると「漫画って自由でいいんだなー」と思えるいい1冊です。 (伊丹直行)
「COMITIA96見本誌読書会」開催!!
なお、今回のコミティアで頒布された全ての本を読むことが可能な読書会が、5月22日、明治大学の米沢嘉博記念図書館にて開催される。参加費は500円。まだコミティアを知らないあなた、すでに知りさらに奥深くサークルチェックをしたいあなたは奮って参加すべきである。(四日市)
【COMITIA96見本誌読書会】
COMITIA96で提出された見本誌を自由に読むことができます。
日程 :5月22日(日) 10:00〜20:00
場所 :明治大学 研究棟2F第9会議室
参加費 :500円(Push&Reviewの「感想」持参の方は400円です)
※会場設営にご協力いただける方は、9:00に会議室前にお集まりください。詳細はコチラへ。
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