2012.05.05.Sat.at Tokyo Big Site.
有明・東京ビッグサイト東4・5・6ホール
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プロ・アマを問わないマンガ作家・イラストレーターたちが、自主出版した本・作品を発表・販売する展示即売会=コミティア。そこは作家たちが自分の個性を自由に発揮できる場であり、訪問者にとっては未知の表現に出会えるかも知れない宝の島――。 先日開催されたビッグイベント「COMITIA100」の収穫物を、エヴァンゲリオン研究家の四日市氏、コミティアファンの伊丹直行氏、「あぶらいふ」編集人の井上文氏に紹介してもらいます。編集部でゲットした数冊も併せて掲載しますのでぜひチェックを!!
□書名=コミティア100記念 漫子
□作者=飛井類司
□サークル名=光速船と飛井類司
サークル「光速船と飛井類司」の飛井類司氏がかつて所属しブイブイ言わせていたサークル「ユニーク学園マンガ部」から、氏の個人誌をまとめたコミティア100記念らしい記念すべきコピー誌。オタクとオタクの結婚をテーマにした「コミケッコン」。コミケでコスプレしてナオンにモテモテを目指す「コスプレイヤーズ」。鴨川つばめテイストのナンセンスマンガ「ツッパリ武士彦」に、けもケットにて配布されたペーパーの4作詰め合わせ。本当にひどい内容がてんこ盛りで大喜びしてしまう。90年代ボンクラ系の空気なマンガ(平野耕太の3人組マンガやG=ヒコロウの「みんなはどう?」あたりの空気を想像してほしい)。(四日市)
□書名=コール氏と彼のなくならない荷物
□作者=ココノツ
□サークル名=notch 虫(カナブンだろうか)のコール氏の一日の物語です。全編虫! 虫! 虫! 擬人化一切なし!なのに、コール氏は哀愁を帯びた初老の紳士にしか見えないし、「ありのこほいくえん」の幼虫さん達は胸がぎゅっとするほど可愛いのです。ココノツさんのやわらかな描線がそうさせるのか、読み終わってあとがきを読むまで「あっ、この漫画、虫しか出てこなかったな」と気付かなかった。童話の様に可愛く美しい1冊。(伊丹直行)
□書名=カナオムニバス2
□作者=カナ尾
□サークル名=あたたん 横溢する不安感と不吉さの中、それでも日々呼吸している登場人物たちのモノローグが陰々と響く漫画短編集(全36ページ)。中でも何者かに凌辱されたと思しき妹に対して欲情を含む複雑な感興を覚えてしまう兄の告白「よるはゆめのなか」は目を見張る暗黒ぶり。表現される軋むような閉塞感が作家性として立ち上がるカナ尾さんの凄みがスパークしています。尚、著者ブログによると「よるはゆめのなか」は今後描かれる物語の「さわり」に過ぎないのだとか。絶望的な閉塞感を表わすだけでも凄いのに、その先が描かれるとなったらもう目が離せません。(井上文)
□書名=トーキョーコンプレックス
□作者=野中太郎
□サークル名=13:55 近未来というほど近くない未来の日本であろうニュージャパン。街にはロボットが溢れ、家事や仕事に政治から芸術までが彼らに任されている世界で、人間はロボットを製造・修理して暮らしている。どこからともなくニュージャパンへとやってきた主人公は、工場のラインで単純作業に従事しながら、超高層ビルが幾層にも立体的に折り重なる都市の隙間、エアポケットへと導かれるように辿り着く。日本人の10人に1人が東京住まいである現在、都市の新陳代謝は殊更に激しい。そんな東京へ新たに参加する者たちの期待や希望、そして疎外感やら戸惑いはいかほどか。住めば都とそらんじるまでもなく、ささやかな決意で充分と示す本作、この春から東京で新生活を送る皆様に。 (編集部)
□書名=すがわら光速まとめ
□作者=すがわらくにゆき
□サークル名=光速船と飛井類司 「おれさま!ギニャーズ!!」「魔女っ子!海堂くん!!」「快速!FREE NOTE Book!!」などの作品で有名なくんちゃんこと漫画家・すがわらくにゆきのコピー誌原稿まとめ本。ダメダメなボスと才気ありまくりな娘によるマフィアのハートフル・ギャグ(ごむっ)。ハートフルから奈落へ直行メルヘンホラー。あとなんかいつも通りな感じのマンガの数々や、がんばって書いた萌え四コマ。もちろんいつもの美女もいる(おやくそく)。98年当時のペーパーも収録されているのは感涙ものである。(四日市)
□書名=セカンドインプレス
□作者=位置原光Z
□サークル名=大作戦 ヤングジャンプ増刊「アオハル」にて記念すべき商業デビューを果たした鬼才にして奇才、漫画家・位置原光Z氏の新刊。日常系の突然変異、いや、そもそも違う種類のものが日常系として育ってしまったのか。あっちとこっちの境界をネタと絵柄でバランスを取る絶妙な作家。もう5年くらい推し続けてますから、書店でも読めるようになったのですから、一度でいいから読んでほしい作家。俺内偏差値100億万点。いいなあ。エロいなあ。かわいいなあ。(四日市)
□書名=箱さん・箱さん2
□サークル名=想い出ヘリポート 関西のライブハウスをたいへん可愛く擬人化した本。ライブハウスって、こんなに沢山あるんですね! そして全員キャラが立っている。いや、作者の細かい部分を愛でる視点から、違和感なくキャラが立てられています。全編可愛い上に、ガイドブックとしても非常に素晴らしい2冊です。ライブハウスはとんとご無沙汰なので、心斎橋クラブクアトロが閉店していたことを、この本で知りました(「箱さん2」では、生まれ変わって「梅田クラブクアトロ」になったことを知りました)。 (伊丹直行)
□書名=浴室の異形(一)
□作者=紙魚丸
□サークル名=JUNKLAND2 「メガストア」などで活躍中の漫画家・紙魚丸氏の18禁同人誌。見本誌を立ち読みしていて「なにこれ上手い。エロい。抜きたい」と思って購入。異形の生物との性交に夢中になってる女の子の話。エロ描写が非常にエロいが、マンガもすっごく上手い。続きが気になるし、なによりエロい。アナルの描き方もとても好みなので異形の生物さんには次回以降、ぜひアナルにもチャレンジしてみてほしい。期待している。(四日市)
□書名=かつしかしか(しか版)
□作者=かつしかけいた
□サークル名=かつしか
1コマ漫画、と言うのでしょうか。葛飾区の風景を切り取ったものに、ささやかなダイアローグが載せられている、1ページごとのフルカラー作品が並びます。サイトでも公開されているのですが、写真でもない、風景画でもない、一般的な漫画でもないけれど、漫画でしか表現できない、一瞬を切り取ったもの。葛飾区に造詣が深くない自分にも、その街の空気が伝わるような1冊でした。(伊丹直行)
□書名=ひのひとの“ひ”日常
□作者=ひのひと
□サークル名=ひのひとの“ひ”日常 著者であるひのひとさんがご自身のブログ「ひのひとの“ひ”日常」に掲載した1P完結漫画の中から「お気に入り」を選んで編まれた作品集。「私は」「目薬が」「本当に」「苦手で」と、四つのコマを贅沢に費やして描かれる目薬の差せない女の子、「コンビニは」「24時間」「休みませんね」と、夜の路上でホッと笑顔を浮かべる女の子など、閉塞感ゼロの、ザ・風通しとも言うべき心地のよいデッカイ“間”が癖になるアッパーな作品の連続です。 (井上文)
□書名=あいのさいのう
□作者=高野雀
□サークル名=chapter22 WEBスナイパーでも「食卓リンガフランカ」を連載中の漫画家・高野雀氏による新作マンガ。今回もオムニバス形式、恋に落ちるのが怖い男子の片思い、別れを切り出された男子の後悔、別れを乗り越えた男子の想い出と良い感じに締めるジジイの4話。毎回、装丁にもこだわりが感じられるChapter22ですが今回は総二色刷りが作品のテーマとうまく重なって淡くて若い感じで好ましい。3人目の彼女がかわいい。付き合いたい。あと、Chapter22の男子オムニバス本にいつも思うのが、表紙などの男子数人の集合絵に何かものすごい背徳的なものを感じる。この気持ちの正体も確かめていきたい。(四日市)
□書名=ゆめこ、14才
□作者=安堂ミキオ
□サークル名=GO PETS GO 教室の窓から校庭にいる憧れの男子を想ってポエムを綴るユメコ14才。不意に彼と昇降口でぶつかったそのとき、ユメコは思いがけず青春のスタートラインに立たされた。そんなある日、ユメコのポエムノートが破られて、彼への想いがポエムと共に白日にさらされる。思春期の自意識は様々なかたちで現われる。ベタな設定から青春の暗部を狙撃した本作のほろ苦いエピソードをスタートラインとするのなら、14才たちの青春に幸あらんことを願わずにはいられない。(編集部)
□書名=タイム-コンプレックス イン ロクメイカン
□サークル名=こんなはずじゃ!/もんしろ社 久しぶりのもんしろ社さん、今回は「こんなはずじゃ!」というサークル名で参加されていました。とは言え作品はお馴染み、おてんばお嬢様3人娘のてんやわんやです。今回は鹿鳴館に潜り込んだり、流れで国家機密を暴露しちゃったりとスケールがでかい(?)。時代背景が色々とごった煮になっていますが、巻末にちゃんとした年表まで付いています。もんしろ社さんの緻密なのにコミカルな描線はやっぱり良いですね。 (伊丹直行)
□書名=踊る触手種研究所2
□作者=カワイ
□サークル名=どくやく コミティアで18禁同人誌を買うことはあまりないのだが見本誌を立ち読みしていておもしろかったので購入。触手もののエロマンガは数多くあるが、触手を逆レイプするマンガはおそらく数える程度だろう。触手が当たり前に受け入れられ、性行為のための愛玩生物になった(?)未来に生きてる世界、触手を育成・培養するための研究所で触手の童貞を奪うのが趣味な触手食系女子がいた!当然ながら触手あり。異種姦あり。妊娠ありとエロさも大満足。「童貞触手が好きなんだもの!」というセリフだけで十分読む価値あり。(四日市)
□書名=バンドをやってる友達 / Nearly Equal
□作者=ミトミ
□サークル名=Nearly Equal
漫画家・三富拓哉氏による個人サークル。バンドをやってる友達に対するマンガをやめてしまった元・漫画家志望の追憶と後悔にフィーチャーした後味に苦味の残るマンガ作品。三富拓哉氏と言えばバンド「スカート」のジャケットを描いており作中に登場するバンドもスカートをもじったスパッツ(スピッツもモジッてる?)だが、内容は完全フィクション。ラフタッチだが押さえるべきところを押さえた印象で、表紙が目に止まったので購入。(四日市)
□書名=てきとうまんが 2012春号
□サークル名=てきとう
てきとうさんの描く、可愛くてどこか大事なところが抜けてしまっている女の子達を堪能できる1冊。理不尽なほどのテンポのよさ、そして投げ出したかのような勢いの良いオチ。完璧です。個人的には、モテたいひろきの「あ〜おっぱいとか…もんでみてえなあ…」という台詞でグッと掴まれました。おっぱいは地球を救いますが、ひろきは勿論救われません。(伊丹直行)
□書名=網点と線数
□作者=野口尚子
□サークル名=PRINTGEEK
7、8年ぶりの同人活動だという、印刷についての制作、ディレクションを行う事務所「印刷の余白 Lab」主催、野口尚子氏による同人サークル「PRINTGEEK」によるPhotoshopのモノクロ2階調化をつかった表現方法の実践とハウトゥー。網点、線数とは何かから始まり、Photoshopの使い方から実践的なテクニックから実際に使ったテクニックまで、デザインだけでなく実際の印刷技術まで踏み入った本はコミティアでは珍しさを感じた。第一弾冊子らしいので次回以降もぜひ追いかけていきたい。(四日市)
□書名=HOTEL愛・素路期
□作者=原田尚
□サークル名=素路 ラブホテルに捨てられていた女の子がそのホテルを経営する老夫婦に育てられ、戸籍がないために学校へも行けずカウンターで客たちの応対をしながら暮らす日々。日本に居場所がない点でヒロインと共通項を持つフィリピン人売春婦とのドラマが涙を誘いつつ、社会の中で生きる力を確かにくれる漫画作品『HOTEL愛』。これが2008年の発行で、今回のコミティアに合わせて編まれた短編集『素路期』には「HOTEL愛」の他、WEBスナイパーでも紹介された「空だって飛べるのに」「astronauts」「高橋さん」という気になる4作品の“その後”が収録されていました。人間の弱い部分を嘲らず卑下せず、正面から取り扱う姿勢にブレがない著者・原田尚さんをいろんな角度から味わえる1冊。旧作と合わせてチェックを。(井上文)
□書名=メタラーのためのロシア語会話
□サークル名=トゲナシハリネズミ
メタラー(へヴィメタル愛聴者)でなくとも、ロシア語に興味のある方には是非おすすめしたい1冊。バンド名の読み方から、地下鉄に乗ってクラブでチケットを買い、愉しんで帰ってくるまで、をガイドされています。第二外国語でロシア語を取って断念したあなたも是非どうぞ。メタルというといかついイメージがありますが、この本でナビをしてくれるてつろう君もメスチラフさんも、非常にぽわっとした可愛らしい見た目で、そのギャップもまた良いです。 (伊丹直行)
□書名=男子トイレで待ち合わせ
□作者=水あさと
□サークル名=ミルメークオレンジ 「デンキ街の本屋さん」「世界征服セキララ女学院」などで活躍中、変態と泣き顔に定評のある漫画家・水あさと氏の個人誌。氏の同人誌は女子が未来に生きてる系ド変態のブットビギャグ漫画 or 泣いてる女の子が超かわいいドン底欝マンガの2パターンで、欝サイドのマンガはかなり後を引くので毎回どっちなのかドキドキもの。今回は便所を舞台にした心温まるラブコメ・ギャグ。便所なので下品なネタも多いのにこんなににやけてしまえるマンガに仕上がっているのはさすが普段から変態を使いこなしている水あさと。とても良かった。便所飯にも、希望はある!(四日市)
□書名=さよならゲーム
□サークル名=ジャポニカ自由帳 毎回出されているコピー誌、の、総集編オフセット本。6年ぶりだそうです。コピー誌のほうも購入していたのですが、まとめて読むとまた違った感慨があります。特に小坂さんの4コマ「風」は、改めて読んでもハッとさせられます。毎回、たった4コマでここまで描ききれるものなのか!とびっくりしているのですが、語り口があっさりしているせいか重くなりすぎない絶妙さがあります。こてはしさんの淡々としたリリカルさ、小坂さんのキャッチーながらも後を引く強さ、どちらも堪能できます。お薦めです。(伊丹直行)
□書名=迷走アリス
□作者=小野幸子
□サークル名=すみっこのねこ 我々のよく知るアリス同様に、不思議な世界へと誘われて時間を遡っていくアリス。その途中、アリスは奪われて失くしたものたちとの邂逅をはたしていく。抽象的なイメージで展開する物語が示すのは、生まれてこなかった何か。表紙のポップさと対照的にベタが印象的な本編の図案は、作者のブログで閲覧できます。制作課程もアップされていて、ネームが削ぎ落とされたこともわかったり。初見では印象をつかむことしかできなくとも、観る度に繊細な心情に触れてくる、そんな1冊。(編集部)
□書名=同人誌即売会研究史 1971〜1986
□作者=国里こくり
□サークル名=よつばの。 同人誌読書会「よつばの。」主催、同人誌即売会研究家の国里こくり氏による同人誌即売会の歴史研究本。4月に行われたCOMIC★1が初売だが、今回のコミティアに委託されていたので紹介する。豊富な資料とネット上に散逸した当時の参加者の記憶から、1987年から1986年まで(1988年の状況もちょこっと)の同人誌即売会に関する主たる出来事がまとめられた研究書。同人誌即売会の起源とその思想の遍歴を辿る。参考物件の紹介も充実しており後続の研究者は必読である。(四日市)
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