Photo series by Shirao Ray;turtle shell tombs
新連載 写真シリーズ「カミヌクー」
沖縄県に多く見られる墓の形式のひとつ「亀甲墓」。「カミヌクーバカ」とも呼ばれる巨大なそれは、形状から「亀の甲」を意味するだけでなく、母の体を表わしてもいた。――人は生まれ、どこへ還るのか。フォトグラファー・白汚零の写真シリーズ連載全5回、月に一度の更新です。
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先祖が宿る子宮
亀甲墓は沖縄県に多く見られる大型の墓で、カミヌクーバカ、キッコウバカなどと呼ばれている。その形は亀の甲羅のようなドーム状の屋根を持ち、その前には区切られた庭がある。
沖縄には数種もの墓の形態があるが、沖縄本島および八重山諸島に多く分布する亀甲墓に僕が惹かれたのはその「亀」の形が表す2つの意味にある。
亀甲墓のルーツは台湾、香港、中国福建省辺りにあるらしい。中国の思想では人が生まれた時点で青春、赤夏、(朱夏)、白秋を経て目も見えない何も聞こえない無の状態、黒冬(玄冬)を経て人生の終焉を迎える。そこはこれから生まれいずる生命のきわめて初期の段階に結びつけられる。ちなみに中国の四神のうち冬(北)を守るとされる玄武の神は亀である。
そしてもうひとつ、亀甲墓自体が女性の身体を表現していることだ。亀の甲羅に見える墓の天井部のふくらみは妊婦のおなかを表し、両側に伸びる囲いは大きく広げた足、墓の正面に人ひとりやっと入れる位の小さな穴が開いているが(普段は石や漆喰などで塞がれている)、そこが胎児の産道を表している。子宮の中に死者を葬る、死して母体へと回帰してゆくということだ。
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