法廷ドキュメント されど俺の日々
逆上と衝動の法廷ドキュメント、第八回をお届けいたします。
犯人の名前はすぐ判明した。
前科三犯、貞野正太、三十歳。
前科の内容は、婦女暴行、傷害、窃盗であった。
いずれも実刑が科せられており、正太は一週間ほど前、最後に犯した窃盗の罪による服役を終え出所したばかりであった。
出所して間も無い時期に又、凶悪事件を引き起こしたものである。
これだけでも正太の犯罪性向が窺えようというものだが、前科の内容も正太の危険な性格を浮き彫りにしていた。
犯罪歴として、正式に捜査機関に登録されている罪名こそ、婦女暴行(つまり強姦のことである)、傷害、窃盗であるが、正太の犯罪者的性格は、既に中学生の頃から如実に剥き出しにされていた。
スーパーでの万引き、同級生や下級生への恐喝、女生徒への猥褻な振る舞い等。
こうした行為により正太は近隣者から疎んじられ、鑑別所送りにもなったことがある。
まだ中学生だからということで、大目に見られはしたが、将来、何か重大な事件を引き起こす可能性は十分にあると関係者らは観察していた。
中学を卒業後、正太は市内の運送屋に運転助手として就職した。
労働することにより少しでも健全なる精神を養って欲しいとの周囲の期待はやがて見事なまでに裏切られることとなった。
就職して一年程経過した頃、正太は暴走族の幹部となり暴力団とも付き合うようになった。
そして、十八歳の夏、正太は強姦事件を引き起こし、告訴され、逮捕された。
驚いたことにあれほど周囲から不良少年視されていたのに、正式に逮捕されたのはこれが初めてであった。
しかし、この逮捕による取り調べの結果はすさまじいものがあった。
告訴された事件以外に正太は何と二十件以上もの強姦を自白したのである。
一つ一つの事件を笑いを浮かべながら自白した正太は、十八歳の少年とは思えないふてぶてしさを既に身につけていた。
取り調べ官に対して、正太は寧ろ楽しげに自供を続けたのである。
被害者は、看護婦、高校生、店員、OL、主婦等、多種多様な範囲に及ぶ。
それこそ、女であれば誰でもと思わせるような被害者群であった。
だが、これらのうち捜査機関が強姦事件として立件し、起訴できたのは二件のみであった。
この起訴された二件は、被害音がいずれも高校生であり、示談も出来ていないということから実刑が言い渡された。
懲役二年であった。
刑務所から出て来た時、正太は二十歳、成人となっていた。
まだ二十歳であり、十分更生し得る年齢である。
立ち直って欲しいとの周囲の祈りにも似た期待は、翌年、簡単に裏切られる。
法廷ドキュメント されど俺の日々 第二回 文=法野巌 イラスト=笹沼傑嗣 次々と凶悪な犯罪を繰り返す正太の犯罪者的性格は中学の頃から如実に現れていた。 |
逆上と衝動の法廷ドキュメント、第八回をお届けいたします。
前科三犯、貞野正太、三十歳。
前科の内容は、婦女暴行、傷害、窃盗であった。
いずれも実刑が科せられており、正太は一週間ほど前、最後に犯した窃盗の罪による服役を終え出所したばかりであった。
出所して間も無い時期に又、凶悪事件を引き起こしたものである。
これだけでも正太の犯罪性向が窺えようというものだが、前科の内容も正太の危険な性格を浮き彫りにしていた。
犯罪歴として、正式に捜査機関に登録されている罪名こそ、婦女暴行(つまり強姦のことである)、傷害、窃盗であるが、正太の犯罪者的性格は、既に中学生の頃から如実に剥き出しにされていた。
スーパーでの万引き、同級生や下級生への恐喝、女生徒への猥褻な振る舞い等。
こうした行為により正太は近隣者から疎んじられ、鑑別所送りにもなったことがある。
まだ中学生だからということで、大目に見られはしたが、将来、何か重大な事件を引き起こす可能性は十分にあると関係者らは観察していた。
中学を卒業後、正太は市内の運送屋に運転助手として就職した。
労働することにより少しでも健全なる精神を養って欲しいとの周囲の期待はやがて見事なまでに裏切られることとなった。
就職して一年程経過した頃、正太は暴走族の幹部となり暴力団とも付き合うようになった。
そして、十八歳の夏、正太は強姦事件を引き起こし、告訴され、逮捕された。
驚いたことにあれほど周囲から不良少年視されていたのに、正式に逮捕されたのはこれが初めてであった。
しかし、この逮捕による取り調べの結果はすさまじいものがあった。
告訴された事件以外に正太は何と二十件以上もの強姦を自白したのである。
一つ一つの事件を笑いを浮かべながら自白した正太は、十八歳の少年とは思えないふてぶてしさを既に身につけていた。
取り調べ官に対して、正太は寧ろ楽しげに自供を続けたのである。
被害者は、看護婦、高校生、店員、OL、主婦等、多種多様な範囲に及ぶ。
それこそ、女であれば誰でもと思わせるような被害者群であった。
だが、これらのうち捜査機関が強姦事件として立件し、起訴できたのは二件のみであった。
この起訴された二件は、被害音がいずれも高校生であり、示談も出来ていないということから実刑が言い渡された。
懲役二年であった。
刑務所から出て来た時、正太は二十歳、成人となっていた。
まだ二十歳であり、十分更生し得る年齢である。
立ち直って欲しいとの周囲の祈りにも似た期待は、翌年、簡単に裏切られる。
(続く)
07.08.10更新 |
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